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薬価引き下げ財源がある
―本体プラスは可能だ―

(全国保険医新聞2015年11月25日号より)

 

 2016年度診療報酬改定に向けた議論が進んでいる。政府は「財政健全化」が必要として診療報酬をはじめ社会保障費の抑制を目指す。一方、医療機関の経営悪化が明らかになり、診療報酬引き上げを求める声が上がる。薬価財源活用の重要性が増している。

財務省に要請

 全国保険医団体連合会の住江憲勇会長は11月19日、次期改定に向けて診療報酬の引き上げを財務省に要請した。住江会長は、日本の薬価の高止まりを指摘し、薬価引き下げによって診療報酬本体を引き上げる財源を生み出せると述べた。要請は医療従事者らでつくる医療団体連絡会議として実施した(詳報は12月15日号)。
 財務省は10月30日の財政制度等審議会で、薬価改定などを通じた薬剤費の削減を提案する一方、薬価引き下げ分の本体への振り替えは否定。本体マイナス改定の方針を示していた。
 前回(14年度)の改定ではいわゆる薬価財源の切り離し≠ェ行われた。改定に先立つ財政制度等審議会では、振り替えは「合理性がない」と否定していた。

振り替え「合理的」「当然だ」

 薬価財源の本体への振り替えは、1972年の中医協の「建議」で提案されて以降、厚生大臣や首相も公式に尊重してきた。12年度の改定まで慣行として踏襲されている。安倍晋三首相も97年当時、衆院厚生委員会で実質的にこれを容認する発言をしている。
 日本福祉大学学長の二木立氏(医療経済・政策学)は「診療報酬改定の独自財源を十分に確保できないという財政制約下で、薬価引き下げ分を診療報酬に振り替えるという政策的・政治的判断がなされてきたことはそれなりに合理的であり、尊重されるべきだ」と指摘している(『文化連情報』2014年3月号)。
 自民党厚労部会長に就任した参院議員の古川俊治氏も、社会保障費の伸びの抑制を前提としながらも、診療報酬本体のマイナス改定を回避したい考えを示し、薬価財源の本体への充当は「当然だ」と強調した(「メディファクス」11月11日付)。
 医療経済実態調査では、診療所の経営悪化の傾向、病院の赤字が明確になった。日本医師会の横倉義武会長は、プラス改定を行わなければ医療崩壊の再来を招くと危機感を示している。診療報酬の改定率は年末までに閣議決定される。保団連はプラス改定を求めて要請などを強める。

以上