外来、在宅 次期改定の動向
「地域包括」「同一建物」等を議論
(全国保険医新聞2015年11月25日号より)
2016年度診療報酬改定に向けた議論が中医協で行われている。地域包括診療料や在宅医療などの議論の動向を概観した。
地域包括診療料拡充など課題
外来では、長期処方での分割調剤の拡大が焦点になっている。厚労省は前回改定時にも提案したが見送られた。日本医師会の委員は反対しており、厚労省は再調整するとしている。
「かかりつけ医機能」の評価と関連し、地域包括診療料・加算の対象患者拡大や算定要件を一部緩和することも課題となっている。地域包括診療料は、届出医療機関が14年7月時点で122施設にとどまり、15年7月には93施設となり23.8%減少している状況だ。
財務省は、「かかりつけ医以外」を受診した場合、1〜3割負担に定額負担を上乗せすることを提案している。「かかりつけ医以外」の対象は「地域包括診療料が適用されない」医療機関としており、患者負担増とリンクさせる方針だ。
在宅は患者状態に応じた評価の方向
在宅医療では、@在宅専門医療機関の承認の可否、A診療頻度ではなく、「患者状態」に応じた評価への転換、B同一建物での訪問診療は「患者の居住場所」に応じた評価がポイントとなっている。
厚労省の調査では、訪問診療対象患者のうち46%は調査項目のうち「健康相談」「血圧・脈拍測定」「服薬援助・管理」にのみ該当する一方、残りの54%は何らかの医療行為に該当していた。厚労省は、在宅時医学総合管理料等について、長期にわたって医学管理の必要性が高い患者は、疾患・状態等に応じた評価を行うことや、月1回の訪問を評価する考えを示している。患者状態の線引きが焦点になる。
前回改定によって、同一建物へ訪問日を変えて訪問するなど医療機関の負担増となり、「診療の効率性が低下している」と分析。一部見直す方向で、集合住宅内の診療患者数に応じた評価をすることや、一般のアパートや団地の場合、削減幅を緩めることも提案している。
薬価財源振り替え技術料引き上げを
財務省は、薬価改定財源の技術料への振替を否定し、「診療報酬本体のマイナス改定」を打ち出している。診療報酬を1%引き下げた場合、国費で約1000億円の削減に相当するため、マイナス改定への圧力を強めている。
改定関連の項目では、@湿布薬、目薬など市販品類似薬を保険給付から外す、A医薬品等に「費用対効果」評価を試行導入する、B生活習慣病治療薬の処方ルールのガイドラインを設ける、C7対1入院基本料の算定要件を厳格化する、D療養病床の医療区分1の報酬引き下げ・配置基準の緩和、医療区分2・3の要件を厳格化する、などを挙げている。
一般診療所が「全体で減収減益」という中で、総医療費の約3割を占める薬剤費偏重を転換し、技術料を引き上げることが必要だ。
以上