ホーム

 

2016年診療報酬改定
在宅に重症度評価、後発品使用促進

(全国保険医新聞2015年12月5日号より)

 

 2016年度診療報酬改定に向けた議論が中医協で進む。在宅医療、かかりつけ医、後発品促進などの議論の動向を概観した。

重症度等を評価―在宅図 患者の状態及び居住場所に応じた評価の考え方

 幅広い病態の診療実態があるとして、在宅時医学総合管理料等に患者の疾患・状態に応じた評価等を導入する。同一建物・同一訪問日の診療人数による評価から、患者の状態や建物内の診療人数を加味した評価へシフトする。
 ▽患者の疾患・状態(重症患者、その他)▽訪問頻度(月1回、月2回以上)▽居住場所(戸建て住宅、アパート・団地等か、高齢者向け集合住宅・特定施設で区分)▽集合住宅内の診療患者数(例えば1人、2〜9人、10人以上)などで新たに細分化して報酬評価に濃淡をつけるイメージが示されている(図)。
 患者の状態等は、頻回の訪問診療が認められる場合(別表7)や退院時共同指導料で特別な管理を要する状態(別表8)などに含まれる疾病・処置等を参考に、「長期に渡って医学管理の必要性が高い患者」について検討する。別表7・8等では、難病・がん・HIV、透析・人工呼吸・経管栄養等が挙げられている。
 同一日の施設等の複数訪問に係る減算は緩和される形だが、在宅移行が強められる中、戸建て等の重症患者を月2回以上診た場合が重点評価される一方、それ以外の評価の大幅削減が懸念される。医学的に必要回数以上に訪問診療(2回)を受けている患者に、循環器疾患、脳血管疾患、認知症、糖尿病等が多いとして、評価引き下げも示唆している。複雑な算定区分がさらに煩雑化し事務負担増も懸念される。

対象患者を拡大地域包括診療

主治医機能の評価を進めるとして、地域包括診療料・同加算(診療料等)の算定要件を緩和する。現在、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、認知症の内2つ以上を持つ患者が対象だが、認知症を含む算定が少ない中、上記3つ以外の疾患を持つ認知症患者まで対象を拡大する方向である。
ただし、介護療養上の指導や多剤投与等を適正化し、適切な服薬管理を行う場合に評価するとしており、現在診療料等で適用外となる「7剤投与の減算」の取り扱いが議論になりそうだ。認知症患者は、3疾患以外で持つ慢性疾患には、便秘症、消化性潰瘍・逆流性食道炎、骨粗鬆症などが多い。
この間、届出施設数は減少し診療料93、同加算4,713である。診療所が診療料等の届出をしていない理由は、「施設基準の要件が満たせない」が64.1%と最も多い一方、「算定対象となる患者がいない」が23.0%である。届出を行う場合に厳しい要件は「常勤の医師が3名以上配置」が56.3%、「院外処方の場合は24時間対応の薬局と連携」が47.9%、「慢性疾患の指導に係る適切な研修を修了」が34.8%と続く(上表。11月6日中医協総会「総-2-1」P27)。施設基準の充足に困難を抱える中、対象患者拡大の効果は不透明といえる。

後発品の銘柄指定に理由記載

 13年9月時点で後発品の数量シェアは約47%だが、「骨太の方針2015」は17年半ばに70%以上、18〜20年度の早い時期に80%以上にするとして、診療報酬でのさらなる促進を図る。
 院内処方での、後発品の使用促進の取り組みを評価する。診療所における後発品の採用割合が示されており、現在病院を対象とする後発医薬品使用体制加算を診療所にも導入することが検討されそうだ。
 処方せん料は、一般名処方の場合とそれ以外の場合の評価の差を拡大するとしている。一般名処方がない場合等の処方せん料の引き下げも想定される。一般名処方加算も、1剤だけでなく、後発品のある全ての薬で一般名処方をした場合へと算定要件を厳しくする。
 さらに、後発品の銘柄指定(変更不可)をする場合、処方せんに理由の記載を求めることが議論されている。「医師は患者の体調を診て処方しており、責任を持って後発品の銘柄を指定している」などと日医は主張している。目標達成ありきの強引な促進は、医師の処方権や患者の健康確保にも関わり問題である。

以上