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【政策解説】これからの医療制度改革
―政府のスケジュール―

(全国保険医新聞2015年12月25日号より)

 

 政府の経済財政諮問会議は、「骨太の方針2015」に基づく「経済・財政再生アクション・プログラム」を年内に取りまとめる予定だ。「公的サービスの産業化」を掲げ、「アウトソーシングの徹底によって公費軽減」を強化するのと一体で、医療・介護関連分野を「市場として拡大」させる計画である。社会保障分野は44項目が盛り込まれ、法改正が必要な項目は、厚労省の社会保障審議会などで検討を行い、17年以降の通常国会に関連法案を提出する方針である。
 医療・介護分野では、「負担能力に応じた公平な負担、給付の適正化」の名で、さらなる負担増・給付減の項目が盛り込まれた。
 法改正が必要な項目では、「かかりつけ医」以外を受診した場合に、通常の窓口負担に上乗せして定額負担を徴収することや、先発医薬品価格のうち後発医薬品の保険給付額を超える部分は患者が負担する「参照価格制」の導入、治療の場である一般病床入院時に光熱水費相当の居住費を患者負担化する―などが挙がっている。後期高齢者の窓口負担の原則2割負担化は18年度までに結論を出し、実施するとしている。
 法改正が不要な高額療養費制度の見直しでは、▽高齢者の外来特例の廃止▽入院・外来の高齢者の負担額上限を現役世代と同じ基準へ引き上げること―などが狙われている。
 新たな医療費抑制策として、都道府県別・市区町村別に1人当たりの「医療プラス介護」費を算出し、保険給付の実態の徹底的な「見える化」を進め、地域差のデータを分析して、是正などに向けた取り組みを推進することが盛り込まれた。

▽16年末までに結論を得て実施(法改正不要)

■高額療養費制度の負担上限額を引き上げる(高齢者の特例の廃止など)
■高額介護サービス費制度の負担上限額の引き上げ
■療養病床入院時の居住費負担を拡大する
■市販品として定着したOTC類似薬を保険給付外にする(16年度診療報酬改定)

▽16年末までに結論を得て17年通常国会へ関連法案を提出

■一般病床の入院時に居住費を負担させる
■「かかりつけ医」以外を受診した場合に、定額負担を上乗せする
■介護保険の利用者負担の見直し(65〜74歳は2割負担へ引き上げ)
■金融資産を勘案した窓口負担の見直し(一定額以上の預貯金保有者を引き上げ)
■スイッチOTC化された医療用医薬品の保険給付率を引き下げる
■療養病床を「効率的な提供体制へ転換」する
■介護保険の軽度者の福祉用具貸与等の給付縮小、生活援助サービスを地域支援事業へ移行する

▽17年央までに結論を得て実施

■先発薬価格のうち後発薬の保険給付額を超える部分を患者自己負担とする

▽17年度までに結論を得て実施

■診療報酬の特例(都道府県単位で設定)の活用

▽17年度に結論を得て18年通常国会へ関連法案を提出

■生活扶助基準の検証に合わせ、生活保護制度全般を見直す

▽18年度までに結論を得て実施

■後期高齢者の窓口負担の見直し(原則1割を2割へ引き上げ、19年度以降に実施)

▽19年財政検証を経て関連法案を提出

■年金受給開始年齢の見直し(支給年齢の引き上げ)

▽20年央までに結論を得て実施

■病床再編や地域差是正について、都道府県の体制・権限を強化する

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▽1人当たり「医療+介護」費を「見える化」し、医療と介護の地域差を縮小する

[医療費適正化計画18〜23年度]

■16年度末までに半数程度の都道府県で策定する
■1人当たり医療費(年齢調整後)の地域差について、半減を目指して年々縮小させる
■外来医療費の地域差を是正する取組を第3期医療費適正化計画に盛り込む

[介護保険給付適正化計画15〜17年度、18〜20年度]

■1人当たり介護費(年齢調整後)の地域差を縮小させる
■要介護認定率(年齢調整後)の地域差を縮小させる

[国保制度18年度から施行]

■医療費の地域差が反映されるよう国保財政の仕組みを見直す(15年度中に基礎的枠組みを定める)

以上