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開始2カ月で報告45件
―医療事故調査制度―

(全国保険医新聞2015年12月25日号より)

 

 10月から始まった医療事故調査制度に関して、日本医療安全調査機構の12月8日の発表によると、制度発足から2カ月間で、医療事故報告件数は45件となった。
 10月は20件、11月は26件で、医療機関の報告取り下げが1件あった。
 この制度では、死亡事故が起きた場合に、それが「医療に起因し、かつ、予期しないもの」であると医療機関の管理者が判断した場合には、「医療事故」として機構に報告することになっている。
 11月の医療事故報告26件の内訳は、医療機関の規模別では、病院からの報告が24件、診療所からの報告が2件だった。診療科の主な内訳は、内科5件、消化器科3件、外科3件、脳神経外科3件、産婦人科3件となっている。
 厚労省などは、年間の事故報告件数を1,300〜2,000件と想定していた。機構の木村壮介常務理事は「まだ少ないという印象」との認識を示したと報じられている。

相談は400件以上

 また機構は、同制度に関連して相談も受け付けており、10月に250件、11月には160件の相談があった。11月中の相談内容としては、「医療事故報告の範囲やその判断について」(41件)、「相談や報告の手続きについて」(38件)、「支援の求め方を含む、院内調査に関する相談」(45件)などだった。
さらに機構は、院内事故調査を実施した医療機関からの「調査結果報告」が、1件あったと発表。制度発足後はじめての結果報告となる。法律の規定で報告医療機関や対象事故、報告内容は公開されないことになっている。

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必然的に報告数減る

浜松医科大教授 大磯 義一郎氏

 厚労省が想定した「1,300〜2,000件」という数字は、診療行為に係る死亡事故事例の年間発生件数。本制度で報告すべき対象は、このうち「医療起因性があり、かつ、管理者が予期しなったもの」のみ。これについての年間発生件数は試算されていない。今回発表された「報告件数」が多いか、少ないかの議論はそもそもできない。
 本制度では、同じ態様の事故でも、遺族への説明や診療録への記載が適切に行われた場合には、報告対象とはならない。同じ死亡事故でも、管理者が制度を理解し、適切な医療安全対策等の対応をとることで、必然的に報告数は減っていくのではないか。
 制度発足後も個別事案の紛争解決、すなわち、責任追及のために本制度を利用しようとする動きがある。紛争解決や遺族への補償は重要な課題であり、積極的な議論を期待したいが、将来の同種事故防止を目的とする本制度とは分離しなければならない。国際的にも裁判を用いた責任追及はうまくいっていない。適切な補償がなされるよう、無過失補償制度の導入が望まれる。

以上