廃止先行、患者置き去り
―療養病床厚労省検討会―
(全国保険医新聞2015年12月25日号より)
厚労省が受け皿案提示
介護療養と医療療養(25対1)の両病床(14万3,000床)は18年3月末に廃止が予定されている。また、地域医療構想では、療養病床の入院患者数の地域差是正(削減)等を求めている。
病床削減に伴う新たな受け皿の検討を進めてきた「療養病床の在り方等に関する検討会」で11月27日、厚労省から受け皿の骨格案が示された。
「医療を内包した施設類型」と「医療を外から提供する住まいと医療機関の併設類型」の2案である。前者は、施設内に医療機能があり、医師や看護師が常駐する特養ホームのイメージ、後者は、住宅と病院等が同じ敷地内にあるイメージに近い。
療養難民の急増懸念
施設利用時の低所得者への食費・居住費補助(補足給付)の取り扱いについて、厚労省は新たな類型を議論した上で「経過措置や可能性を考える必要がある」として、存続等について明言していない。
この間、介護保険施設の多床室の居住費負担の引上げや補足給付の対象縮小が実施され、「骨太の方針2015」では療養病床の医療区分2、3等での居住費負担まで迫っている。
国が推奨してきたサ高住は、低所得者には利用できない現状がある。施設・病床からの患者締め出しが進められ、介護報酬の大幅削減もされる中、療養病床廃止で行き場を失う患者の急増が強く懸念される。
日医・四病協は存続が第一
27日の検討会では、日医と四病協は連名で、移行先となり得る選択肢の拡大は必要として、厚労省に似た2案を示す一方、あくまで、「現行制度の再延長を第一選択肢として検討すべき」と強調している。
四病協を構成する全日本病院協会の会員調査(15年9〜10月)では、医療療養25対1の経過措置終了、介護療養の廃止について、療養病床を有する病院(n=546)では、反対43.0%、賛成5.7%、医療療養25対1と介護療養病床のいずれか・両方を持つ病院(n=234)で、反対72.2%、賛成4.3%となっており、現場では存続を求める声が強い。
介護療養病床からの転換先が未定である理由(病院67件)についても、「近隣の医療機関や介護施設等から、慢性期医療の受け入れ先としてのニーズが高い」46.3%、「地域で療養病床が必要とされている」35.8%、「現状の体制で、入院患者の症状が安定」34.3%など、診療報酬・介護報酬改定の方向性を見て判断(34〜38%)と同等かそれ以上となっている(全日病調査、13年10月)。患者、地域、施設等から強く必要とされる療養病床の存続に向けた議論・検討こそが求められる。
以上