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高薬価是正が先決 次回改定へ審議始まる
製薬業界、薬価上乗せを提言

全国保険医新聞2019年4月25日号より)

 

 中医協は2020年度薬価制度改革に向けた審議を開始した。製薬業界は、次期改定に向けた「政策提言」を公表し、新薬の評価引き上げを求める構えだ。薬価算定過程を透明化し、高薬価を是正することが先決である。

 

算定改定の透明化に向けた議論を

 中医協薬価専門部会は3月27日、20年度薬価制度改革に向けた審議を開始した。
 6月頃から主な議題などを確認しつつ、秋頃に20年度薬価制度改革に向けて議論を深め、11月に取りまとめを行い、12月に総会に報告する。適宜、製薬業界等のヒアリングを挟みつつ議論を進める。
 先立つ1月24日、新薬メーカーを中心に構成する日本製薬工業協会は、「製薬協 政策提言2019」を発表し、20年度及び22年度に向けた制度見直しの方向性を示している。20年度改定に向けて▽加算をより取得しやすい評価体系への見直し▽治療により回復した患者の就労や介護者の負担軽減など「労働生産性」等を評価▽妊産婦や腎機能障害患者への効能等を加算で評価▽新薬創出等加算の見直し―など高薬価算定を強化する方向での提案である。
 昨年12月の費用対効果評価に係る中医協ヒアリングでは、日米欧の製薬業界として、生産性損失や公的介護費など含めて薬価を考慮するよう求めている。自民党議員と製薬企業でつくる「製薬産業政策に関する勉強会」では、「提言」における労働生産性等の評価をめぐり、「薬価を下げないでほしいと簡単に言ってくれた方が分かりやすい」などはっきりとした発言も出ている(メディファクス、3月25日) 。今後の審議動向が注目される。

 

新薬対象からの排除を懸念

 「労働生産性」等の評価をめぐって、この間に導入された費用対効果評価では、▽生産性損失はばらつきや推計方法による差が大きい▽データ提出者が有利なデータを提出するインセンティブが働く―などの問題から評価していない。生産性損失を含めた分析を行う国でも、実際に分析に用いられているのは一部のケースのみとも報告されている)(中医協費用対効果評価専門部会、13年1月)。
 虚弱高齢者、重度要介護者、障害者や延命状態にある者など、治療による就労・社会復帰や介護軽減などが見込みにくい者については、薬価の評価が低くなり、新薬開発から排除されかねない問題も指摘される。
 薬価算定案を作成する薬価算定組織の審議や議事録は開示されておらず、新薬評価の妥当性に度々疑問が投げかけられてきた。生産性評価などの以前に、薬価算定過程の透明化などに向けた議論が必要である。

以上