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負担増が原因で中断が「あった」医科42.2%、歯科42.6%

健保本人等の受診抑制は深刻

保団連 03年4月実施/健保本人等負担改定影響
調査結果の概要

<調査の目的、概要>

 保団連は、昨年来より健保法等の改悪に反対し、各界と協力・共同した運動をすすめてきた。しかし、健保法などの改悪が強行され、昨年10月より高齢者窓口負担増などが実施され、本年4月1日より、健保本人、退職者と家族入院の窓口負担が3割に引き上げられた。保団連では、負担増にともなう患者の実害をよりいっそう明らかにし、2割負担に引き下げる運動をより広く推進するため、実施1ヶ月間の影響を会員医療機関の5%を抽出して医療機関向けの調査を実施した。また、4月に受診や治療を控えたと思われる患者を対象とした、患者影響調査を実施した。

 実施時期は、5月9日から5月20日まで。

 回収数は、医療機関    1,296件(医科835件33.6%、歯科461件26.6%)

        患 者        329件           2003年6月9日現在

<調査結果の概念>

1.医療機関調査の回答での特徴

(1)6割を超える医療機関が、患者数が「減った」と回答

 医療機関調査では、4月分の診療報酬の外来請求で、患者数(件数)が前年同月と比べて「減った」という回答が、医科で68.9%、歯科で64.6%であった。「減った」と回答した医療機関の中で減少割合をみると、1割未満が医科36.9%、歯科31.9%、1割から2割未満が医科37.7%、歯科37.6%となっている。

 

「減った」と回答した医療機関の中での減少割合

(2)医科で約8割、歯科で約7割の医療機関が、請求点数が「減った」

 4月分の診療報酬の外来請求で、請求点数が前年同月と比べて「減った」との回答が、医科で78.9%、歯科で69.8%であった。

 

「減った」と回答した医療機関の中での減少割合

(3)4割を超える医療機関が、患者負担増が原因と思われる受診や治療の中断が「あった」と回答

 患者負担が原因と思われる受診や治療の中断が「あった」との回答が、医科で42.3%、歯科で42.6%であった。

 中断のあった疾患では、医科で、「高血圧症」「高脂血症」「糖尿病」「胃炎・胃潰瘍等」「腰・膝痛/関節症等」「肝機能障害、肝炎」など、歯科では、「歯周病」「欠損歯」「う触歯(虫歯)」「歯髄炎」「歯根膜炎」「補綴関連」などで、慢性疾患が多い。

・医科で受診や治療の中断のあった疾患

(その他を除いた数のグラフ)

(その他の疾患)

「アレルギー性鼻炎」「風邪・咽頭炎」各6

「副鼻腔炎」「緑内障」各4

「うつ病」「慢性膣炎」「外陰炎」各3

「慢性耳鼻疾患」2

「前立腺癌」「前立腺肥大」「白癬」「卵巣機能欠落症」「アレルギー性結膜炎」「脳梗塞」「呼吸器疾患」各1

・歯科で受診や治療の中断のあった疾患

(その他を除いた数でのグラフ)

 また、患者負担増によって診療内容に影響を「受けた」との回答が、医科で64.8%、歯科で49.2%であった。

 

具体的な受けた影響

 これらの受診や治療の中断のあったとする疾患は、適切な受診・管理のもとで長く通常な生活を送ることが可能であるといわれている。しかし、中断すれば、重篤な合併症を引き起こしたり、生命を脅かされる場合もある。

 自由意見欄では、「疼痛さえとまれば、そこまでで補綴物の修復まで来院する患者数が2〜3割減少」「慢性期で落ち着いた歯周病患者や急性期を超えたう蝕歯などの患者の中断が多くなった」など、とくに歯科では主訴がなくなれば受診しないことにより、全体の疾患管理などが困難になっていることがうかがえる。

2.患者調査の回答での特徴

(1)4月の中断患者の受診していた疾患の24.2%が「高血圧症」

 4割を超える医療機関で、患者負担増が原因と思われる受診や治療の中断が「あった」と回答しており、中断のあった主な疾患として「高血圧症」が148件、「高脂血症」124件、「歯周病」105件、「糖尿病」88件となっている。

 受診や治療を控えたと思われる患者向けの調査では、受診していた疾患について聞いたところ、「高血圧症」が104件、「糖尿病」が39件、「歯周病」が43件との回答となっている。

 

(その他を除いた数のグラフ)

 ここであげられている疾患は、受診や治療の中断にともない、医師・歯科医師の立場からみて、継続的な疾患管理ができにくくなることが危惧される。

 4月はどうされたか聞いたところ、「受診を中止した」が64件(18.0%)、「3月末に受診して投薬などしてもらったので、4月は受診しないつもり」が70件(19.7%)「医療機関を減らした」が50件(14.1%)であった。

(2)今後「受診回数を減らす」が25.1%、「よほど悪くなったら受診する」が21%−負担増が心理的に負担に

 今後どうするかを聞いたところ、「受診回数を減らす」が93件(25.1%)、「よほど悪くなったら受診する」が78件(21.0%)であった。

 4月1日からの患者負担改定にともない、受診を中止したり、受診する医療機関を減らしたりするとともに、これからの受診傾向も減少傾向にあることがうかがえ、負担増加に見合った対応を余儀なくされていることがうかがえる。

 自由意見欄には、増えない賃金収入やリストラ、解雇、倒産、先行きの見えない不況の中で、窓口負担が一方的に増やされることへの不安や不満を訴えるものが、多かった。「不況で残業手当等がカットされており、年収も2割ほど減少している。だから医療費が増加するのは困る」「病気のとき(慢性なのでこれから先も)ぐらい安心して受診でき、必要な薬も飲みつづけられるように医療費の負担を減らせるよう政策、税金の使い方にしてほしい」等の声は、象徴的である。

3.負担増の実害の軽減を求めていく運動が重要−健保本人3割実施に約8割の患者が「反対」

 今回の改定で健保本人、退職者と家族入院の窓口負担が3割に引き上げられた。4月から実施された窓口負担について、患者調査では「反対」が82.4%となっており、「国は医療や福祉にもっと予算を使うべき」との考えに、「賛成」が86.0%であった。

  「国民の健康の確保をめざした健保であってほしい。弱い者にしわ寄せがいく行政には絶対反対します。」「高速道路や公共の建物に税金を使うなら、社会保障関係(年金、医療)に使ってほしい」など、国の予算の使い方に対しての多くの意見が寄せられている。

 昨年10月から実施の高齢者窓口定率負担化と3割負担を含む一連の患者負担増によって、慢性疾患を中心に患者の受診抑制をまねき、国民に健康を悪化させていることは明白であろう。2割負担に戻す法改正も含めた国会、政府への抜本的改善の働きかけとともに、地方自治体の医療費助成制度の活用・拡大を通じた負担増の実害の軽減を求めていく運動がいっそう重要になっている。