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国民の健康を利潤追求の目的とする株式会社の
医療参入に反対します
2004年4月27日
全国保険医団体連合会
政策部長 津田 光夫
4月27日、政府は、特区で株式会社の医療参入を認める構造改革特別区域法「改正」案を衆議院本会議で可決し、参議院に送付しました。
最大の問題点は、株式会社が病院・診療所を開設することができる医療法等の特例規定が盛り込まれたことです。「特区内での自由診療で高度な医療」に限る、限らないに関わらず、公益性を確保すべき医療分野に、市場原理を原則とする営利資本=株式会社を参入させることは、株主への利益配当を目的に、医療を手段とすることになります。
医療の公益性を否定するもので、国民の健康や生命を利潤追求の目的とすることにほかなりません。株主への配当のためには、「効率性」が追求されることになり、医療の質や安全性の確保、継続性が損なわれることが危惧されます。
この法案が施行されれば、わが国の医療制度に、「自由診療で高度な医療」という新たな枠組みを設けることになります。「厚生労働大臣が定める指針」に基づくとされていますが、患者、国民の生命や健康に必要な「高度な医療」が、将来にわたって、自由診療という別枠に置かれたままで、保険給付が適用されないことになれば、国民の経済力格差をそのまま医療に持ち込むことになり、負担に耐えられない国民を「高度な医療」の外に追いやることになります。
法案に明記された「陽電子放射断層撮影装置による画像診断」(PET検査)によって、個々の患者に適切な手術が行なわれれば、乳がん患者2万8000人で年間16億円の医療費を節約することが可能という日本アイソトープ協会試算の新聞報道もあります。トータルコストを考えても、PET検査での早期発見による医療経済効果は大きいといえます。保険給付の適用を検討すべき医療までも、株式会社病院が提供する医療の枠内とすることは容認できるものではありません。
一方で法案は、一定の条件下では「高度な医療」以外の医療の提供を容認しており、今後、大臣告示の改定によって、株式会社病院で提供可能な医療の範囲が拡大されることも十分考えられます。
そもそも特区は、「一定の効果」が得られれば、全国に普及することが目的で設けられたものであり、公的医療保険の対象範囲を限定・縮小し、患者負担へ転嫁するという医療保険制度の「2階建て」化に大きく舵を切るものです。
医療保障に必要な規制までも緩和・撤廃し、市場原理に委ねるのではなく、国民の生存権、健康権を保障する皆保険制度を充実、発展させるべきです。
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