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平和憲法を否定する動きについて

2004年8月4日
全国保険医団体連合会
副会長 秋山 和雄



1.7月20日、日本経団連は、「防衛力整備のあり方」と題する提言を発表しました。そのなかでは、日本の武器の輸出を全面的に禁止している「武器輸出三原則」ならびに宇宙開発・利用を非軍事で平和の目的に限るとした「宇宙の平和利用原則」の見直しを求めています。「武器輸出三原則」と「宇宙の平和利用原則」は、憲法の平和原則を具体化した日本外交の基本政策の一つです。日本経団連は、1995年および2000年にも「武器輸出三原則」の見直しを提言し、今年2月の自民党との懇談でも強く要望しています。

 「武器輸出三原則」とは、武器輸出禁止に関する政府の基本方針であり、1967年に、当時の自民党・佐藤内閣が、@共産圏諸国向け、A国連決議で武器輸出が禁止されている国、B紛争当事国とその恐れのある国、に対して武器輸出をしないというものです。そしてその後、1976年になって、当時の三木内閣が「これ以外の地域への武器輸出も慎む」という政府統一見解を明らかにし、事実上、日本は、武器輸出は全面禁止となっています。共同開発を含む外国への武器技術供与や武器を製造する海外企業への投資も禁じています。

 「宇宙の平和利用原則」とは、1965年5月の国会決議および宇宙開発事業団法で、日本の宇宙開発・利用を平和の目的に限るとしたものです。

 これらの原則は、憲法9条の理念である「戦争の放棄」「国際紛争の平和的解決」「武力行使・威嚇の禁止」を具体化したものであり、憲法とともに将来にわたって堅持すべきものであると考えます。

2.この「提言」に先立って7月21日、米国のアーミテージ国務副長官は、「憲法9条は日米同盟関係の妨げの一つになっている」と発言しました。さらに民主党の岡田代表は、憲法改正によって武力行使に公然と道をひらく立場を表明しました。また、自民党は、「2007年には戦後初の憲法改定が実現する」(中山太郎衆院憲法調査会会長)と、改悪に向けて動きを強めています。改憲を主張する自民、公明、民主の3党が国会の多数を占める現在の状況から一気に改憲の動きを強めようとしています。また、日本経団連は、憲法改定、安全保障政策などを議論する「国の基本問題検討委員会」を設置し、提言づくりをはじめました。

3.この間の一連の動きは、平和憲法の堅持という国民多数の願いをふみにじるとともに、その憲法を根本から否定し、形骸化するものです。

 いま、米国と政財界が、改憲の動きを急速に強めている最大の理由は、海外での武力行使を禁止した9条を取り払い、日本を米国の戦争に参加させる「戦争のできる日米同盟」づくりにあります。

 このような動きに対し、世界に誇る憲法を守り発展させようと、大江健三郎氏や加藤周一氏など9人の文化人が呼びかけ人となった「九条の会」が6月に発足しました。保団連としても、「開業医宣言(1989年保団連第27回総会で採択)」の「歴史の教訓に学び、憲法の理念を体して平和を脅かす動きに反対」する立場から、憲法改悪の動きに断固反対し、「憲法九条の会」の運動を全国で展開する決意です。