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介護保険法案の参院厚労委採択に抗議します


2005年6月16日
全国保険医団体連合会
副会長  住江憲勇

 本日16日、与党および民主党の賛成により、参議院厚生労働委員会で介護保険「見直し」法案が採択されました。

 今回の見直しは「給付の効率化・重点化」を軸に行われ、新予防給付等の創設による介護給付費の抑制と、居住費・食費の自己負担化等による利用者の負担増を内容とする大幅な改悪でした。さらに、現在公費で実施されている権利擁護事業等の高齢者保健・福祉施策を介護保険制度に吸収し、保険料を大幅に引上げるものでした。

 審議過程において法案の骨格に関わる重大な問題点が明らかになり、委員会の責任において解明すべきものでした。しかし、それらの問題点を政令・省令等に委ねるかたちで審議を終了し、採択したことに断固抗議します。民主党委員は法案への異議を委員会質疑で表明していたにもかかわらず、厚生労働大臣に「確認答弁」を求めることで政令等への先送りを容認し、会期内の委員会採択に向けて積極的に動きました。また、軽度要介護者の給付を削減する新予防給付については「介護保険制度本来の姿に戻ろうとするもの」と評価し、「居住費負担を求めることはやむを得ない」などと、法案に対する賛成討論を行いました。「政権準備政党」の本質が、今後厳しく問われるでしょう。

 新予防給付創設の理由として政府は、現行の介護給付が軽度要介護者の状態悪化を招いていると説明しました。しかし、その根拠が政府自身の資料によって覆されるとともに、新予防給付の効果は極めて曖昧であり、費用対効果等はまったく不明のままです。

 財界は、居宅サービス利用者の5割を占める軽度要介護者を介護給付から除外するよう求めていましたが、新予防給付の創設はその一歩となりました。従来の介護サービスが大幅に制限され、軽度要介護者の在宅生活が一層困難になることは明白です。

 居住費・食費の全額自己負担化は、年金水準を超える過酷なものであることが審議を通して明らかになり、激変緩和措置として政府は、社会福祉法人の減免制度の運用拡大を打ち出しました。しかし、全社会福祉法人で制度を実施するための措置や、老人保健施設・介護療養型医療施設における減免措置については審議がなされていません。さらに、市町村は9月議会で条例「改正」を行い、利用者への周知期間がほとんどないまま徴収が開始されるという異例な事態が放置されました。

 今後、税制「改正」や、強引にすすめられる個室化や入所基準の重度者へのシフト化と併せ、在宅介護を支える施設入所は困難を極めるでしょう。

 今回の「見直し」法案では、在宅介護の困難を改善する措置は何もとられず、逆に家族介護・家族負担を一層強いるものとなっています。また、介護保険導入の目玉であった利用者の「自己決定」「選択の自由」を享受できるのは、保険料・利用料・保険外負担に耐えられる一部の利用者にますます限られていくと言わざるを得ません。すなわち、低所得者が高所得者の下支えを強いられるという、社会保障の本質を覆す改悪です。

 われわれは、社会保障としての介護保障制度の確立をめざし、国庫負担割合の引上げを基本に据え、保険料・利用料負担の軽減、在宅サービスの区分支給限度額等の利用制限の撤廃、マンパワー及びサービス量の充実等により、介護を必要とするすべての高齢者が十分なサービスを享受できる制度改革に向けて、実施主体である市町村への働きかけを起点に、引き続き努力します。

以上