内閣総理大臣
すべてのアスベスト(石綿)被害者を救済する新法の制定を求める要請書
アスベストによる健康被害が大きな社会問題となっています。昨年の中皮腫による死亡者が、1995年以来約2倍の953人に達し、被害者救済などの緊急かつ総合的な対策が急務の課題になっています。 被害者救済を求める世論を受け、政府は、労災適用から除外される地域住民等を対象にした「石綿新法」の制定を視野に、「石綿による健康被害の救済に関する基本的枠組み」を9月末に発表しました。 しかし、その内容は、被害者救済に限定したもので、アスベスト使用の即時全面禁止等の既存アスベスト対策や健康診断・健康管理手帳制度の確立などには全く触れておらず、国の責任についても、関係省庁間の連携が不十分とするのみで、「行政の不作為があったということはできない」と否定しています。 こうした「新法」では、全国的に広がっているアスベストによる健康被害や不安に応える内容とはほど遠いものと言わざるを得ません。 「新法」では、まず大量の石綿の製造と使用を続けてきた企業と、危険性を認識しながら使用を容認してきた国の責任を明確に位置付けるべきです。被害者救済の骨格をなす補償についても、給付金は被害者遺族に240万円の一時金支給等が検討されていますが、労災補償や公害健康被害補償からみても極めて不十分な補償額です。 アスベストによるすべての被害者救済と新たな被害の発生を防止するため、下記の諸点を「新法」に盛り込むなど、アスベスト対策の強化を要請します。 記 1.アスベスト使用等を速やかに全面禁止とすること。 2.労災適用から除外されたアスベスト被害者については、労災補償に準じた補償を行うこと。労災補償については、時効を適用しないこと。 3.中皮腫以外のアスベスト関連疾患でも補償を受けられるようにすること。 4.アスベストに曝露にした者に対する健康管理制度を確立すること。 5.労災病院での診断・治療体制を拡充するとともに、自治体病院なども含め、診断、治療ができる医療機関を増やすこと。 |