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医療の質を脅かす診療報酬改定に強く抗議する



 今回の診療報酬改定は、公称3.16%のマイナス改定であり、医療費実額では、1兆円に相当する大幅引き下げである。なによりも3.16%という数字に客観的根拠はなく、小泉首相の「過去最大の引き下げを」という指示によるものに過ぎない。“医療費削減先にありき”の暴挙である。国民医療の水準を左右する診療報酬の改定幅がこのようなかたちで決められたことに抗議する。

 マイナス改定の結果、診療所の初・再診料、病院の再診料など基礎的技術料が、初めて引き下げとなった。この影響はすべての医療機関におよぶものであり、まさに患者に良い医療を提供したいという私たちの願いを踏みにじるものである。

 さらに、今回の改定でもっとも被害を受けるのが、療養病床を抱える中小病院である。政府は、今国会に提出している医療改革法案の大きな柱に、医療と介護の療養病床の大幅削減を位置づけている。社会保障審議会での事前検討もなく打ち出されたにもかかわらず、診療報酬改定ではこの先取りとして療養病床の点数引き下げが盛り込まれ、閉床・転換への誘導がされている。「このままでは経営が成り立たない」という悲鳴が、中小病院からあがっている。

 療養病床からはみ出す長期療養者の受け皿として、在宅療養支援診療所の新設がされたが、これまで地域で在宅医療を担ってきた医療機関の役割発揮を促すものとはなっていない。入院医療費の抑制のみを目的とした療養病床削減と「在宅重視」政策は、介護難民の増加など新たな矛盾を生むものである。

 新たにリハビリに日数による算定制限が導入されたが、今後の特定療養費制度の再編の中で制限日数を超えたものが混合診療の対象となることも危惧される。差額ベッド、食事療養費、さらには高齢者の居住費など保険はずし、患者負担が拡大されようとしている。保険で必要な医療は保障するという原則を堅持すべきである。

 「患者の視点の重視」を名目に、個別の費用ごとに区分して記載した領収書の発行が義務付けられた。診療所では、手書きで対応せざるを得ないところも少なくない。医療担当者の合意抜きでの拙速な義務化は、医療現場の混乱を招くものである。

 マイナス改定の結果、人工透析の休日・夜間加算の引き下げや貧血予防薬の包括化が行われ、これまで通りの治療が受けられなくなるのではないかという不安が広がっている。

 われわれ保険医はこのような医療の質を脅かす診療報酬の改悪、大幅引き下げに断固抗議する。それとともに国民が保険で安心して良い医療が受けられるために、診療報酬の緊急再改定を要求する。同時に医療給付の削減と患者負担増の医療改革法案の撤回を要求するものである。

2006年3月19日
保団連医科新点数検討会