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医療制度「改革」関連法案についての17の疑問

                                        

        全国保険医団体連合会

       

1,

多岐にわたる法律「改正」について

 多岐にわたる法律「改正」案が提出されたが、全体的に言って、この改革がすすんだら、日本の医療制度はどうなっているか。

 例えば、「医療費適正化の総合的な推進」という健康保険法等の「改正」の趣旨、高齢者の医療の確保に関する法律案の目的条項から、現行の老人保健法第1条にある「健康の保持」を削除するなどの見直しを含め、この改革の進展によって、日本の医療制度はどのようになっているのか、制度の全体像を明らかにしてください。

2,

高齢者が2割、3割負担、食費・居住費負担になって、負担に耐えられるか

 (1)新設の入院時生活療養費について 

 @「特定長期入院被保険者」を対象とした「生活療養」における「食事療養、温度、照明、給水」の各項目について、想定している水準と費用を具体的に示してください。例えば、室温は夏季と冬季は何度位で、どの位の費用を想定しているのか。入浴は週何回で、どの位の費用を想定しているのか。 

 (2)一部負担金、保険料等について

 @高齢者の一部負担金見直しに伴う、入院、通院、在宅の患者自己負担額について、モデルケースで示してください。

 A高齢者の受給年金額と法改正に伴う健康保険料、平成18年度に見直した介護保険料、医療費及び介護費の自己負担額について、それぞれ平均的な金額を示してください。
あわせて高齢者世帯の生活費について平均及び下位1−3分位の金額を示してください。

3,

介護療養病床の廃止、医療療養型の病床削減で高齢者はどこへ行くのか

 @廃止された病床の老健施設、有料ホームへの転床の見込み数とその根拠を示してください。

 A在宅での対応となる患者見込み数とその根拠を示してください。

 B在宅高齢者における医療サービスと介護サービスの数量について、具体例(月の生活状況)を示してください。

4,

平均在院日数の削減を言うが

 @ 平均在院日数は全病床で36.3日、一般病床は20.2日(2004年病院報告)だが、在院日数の削減をどういう方法で行うのか、具体的に想定していることを明らかにしてください。

 A平均在院日数の各国比較を行うならば、ナーシングホームなど各国の施設体系の違いを是正した後の在院日数を示してください。

 B診療報酬の引き下げや療養病床の削減など、医療が必要な患者の“病院追い出し”を強いる事態となれば、地域における患者の困難が増大するが、国や都道府県、市町村として、どのような施策を講じるのか明らかにしてください。

 C終末期医療における入院と在宅、外来でのそれぞれの医療費及び関連諸費用の試算を示してください。そのうち公費負担分も示してください。

5,

地域での医療の確保はどうするのか

  地域や診療科による医師不足は医療保険制度の問題ではなく、医療提供体制の問題ではないか。医療機関(病院)が今でもない、医師がいない、という地域の実態をどう解決するのか。医師不足の地域の医療機関に対する経営支援策は採らないのか、明らかにしてください。

6,

急性期病院などの医師や看護師の過労状態をどうするのか

 @看護師の有資格者はどれくらいいて、就業者はどれくらいか、具体的な数値を示してください。

 A看護師が働ける環境をどうつくるつもりか、具体的な施策を示してください。

 B厚生労働省が集計した小児科医師の勤務実態の調査内容を公表すること。

 C医師の時間外勤務、当直翌日勤務、サービス残業を労働基準法に則った場合、必要な医師数について調査・公表すること。

7,

在宅医療の担い手をどうするのか

 @今回の診療報酬改定で新設された在宅支援診療所の見込み数を示してください。

 Aケアハウス、有料ホームなどに対する訪問診療が制限されるがおかしいのではないか、制限する理由を明らかにしてください。

8,

実効性のある「生活習慣病」対策を

 健康日本21の計画は、肥満をはじめ高脂血症者などすべての項目で目標値から毎年悪い方へ離れていっている。しかもこの項目のかなりの部分はメタボリックシンドロームそのものである。今回、メタボリックシンドローム対策と名を変え、数値目標として糖尿病患者・予備群を25%減らすというが、その実効性について具体的に示してください。

9,

特定健康審査、特定保健指導(以下、健診、指導と略す)について

@現行の老人健診との変更点について、健診項目など何がどう異なるのか示してください。また、実施主体を市町村ではなく保険者とした理由を明らかにしてください。

 A保険者の健診・指導の費用の見込み額を示してください。加入者の負担の在り方についても想定していることを明らかにしてください。

 B各保険者別の健診率の現状を示してください。健診率向上の具体的な施策を明らかにしてください。

 C健診の結果、異常者に対しては、誰が、どこで、いつ指導を行うのか明らかにしてください。

 D指導のマンパワー、費用、その責任の所在を明らかしてください。

 E健診・保健指導を受けない場合、制度上、当該加入者に対する保険給付に、何らかの制限を導入するのか。もしくは、保険者が当該加入者に対して保険給付上のペナルティを課すことを認めるのか、明らかにしてください。

 F健診における異常の背景には、生活労働環境があると思われるが、生活労働環境の改善についての具体的な方策を示してください。

 G保険料を財源とした健診・指導について、市町村における費用負担の内訳等について、明らかにしてください。

 H75歳以上に対しては、健診・指導を義務付けない理由を明らかにしてください。

 I保険者の健診・指導の「目標の達成状況等を勘案」して、後期高齢者医療への支援金の額の決定に用いられる支援金調整率を、100分の90から100分の110の範囲内で加算・減算するとされているが、算定の基準と方法を具体的に示してください。

 J特定保険料率分の収入が、後期高齢者支援金と前期高齢者納付金の必要額に達しない場合、基本保険料率分の収入から不足額を捻出することになるのか、想定している対応を明らかにしてください。

 K各保険者における健診・指導の実施と記録の管理について、その方法と費用負担等について、想定していることを明らかにしてください。

10,

政府管掌健康保険の改革について

 @全国健康保険協会の設立、都道府県の医療保険給付費を反映した都道府県単位の保険料率の導入など―によって、現在の被保険者の給付と負担の全体について、何がどう変わるのか、明らかにしてください。

 A各支部単位の保険給付量の格差によって、保険料負担の格差を持ち込むことを、制度運営の根幹に導入するのか、明らかにしてください。

 B全国健康保険協会に置く理事会や運営委員会、各支部に置く評議会によって、患者、被保険者を重視した運営体制が確立されると考えるのか、明らかにしてください。

 C全国健康保険協会の役員、運営委員、評議会メンバーの選出方法、支部長の選出方法  とその業務範囲、権限について示してください。

 D国から独立した保険者であるにも係らず、「厚生労働大臣は、事業計画、予算について、あらかじめ財務大臣に協議しなければならない」という理由を明らかにしてください。

 E公的制度の運営主体は当然、公法人が担うべきだが、全国健康保険協会の法人格は、民間法人なのか、公法人なのか。民間法人ならば、なぜ、厚生労働大臣が事業計画等を財務大臣と協議しなければならないのか、理由を明らかにしてください。

 F都道府県単位の保険料は、「ねんきん事業機構」が事務経費を取って徴収業務を行うというが、この事務経費は保険料に上乗せされるのか、明らかにしてください。 

11,

後期高齢者医療広域連合について

 @新しい行政主体である後期高齢者広域連合の機能や構成等について、具体的に示してください。例えば、広域連合の長、議会、事務局の選出方法を示してください。また、各市町村の住民は広域連合に対して、請願権の行使や直接請求、リコール等を行うことができるのか、明らかにしてください。

 A広域連合の「条例で定めるところによる行う給付」の範囲に、「医療費適正化計画」における都道府県単位の「診療報酬の特例」は該当するのか、明らかにしてください。

 B後期高齢者に対する保険給付を保障する診療報酬を、別建ての体系とする理由を明らかにしてください。

 C後期高齢者医療の終末期における診療報酬は、具体的にどのような内容、項目を想定しているのか、明らかにしてください。

 D保険料の普通徴収の場合、世帯主は、世帯に属する被保険者の保険料を、「連帯して納付する義務を負う」とされている。一方、健康保険法等で新設される「高額介護合算療養費」は、同一の医療保険に加入する同一の世帯単位で合算する、という説明である。つまり、保険料納付の義務は同一世帯としながら、「高額介護合算療養費」は、同一世帯かつ同一医療保険でないと認められない、というのは矛盾するのではないか。

 また、同一世帯とは住民票上の世帯か、医療保険上の世帯なのか、などについて明らかにしてください。

 E保険料滞納者に対して、国保と同様に「被保険者資格証明書」を交付するとされているが、具体的な交付要件を示してください。

 F現行の老人保健法に加入者は資格証明書の交付は適用除外されていたが、なぜ、方針を転換したのか明らかにしてください。

 G広域連合は、新設の後期高齢者医療診療報酬審査委員会の審査・支払い事務を、国民健康保険団体連合会に委託することができ、さらに国保連は厚生労働大臣が指定する法人(「指定法人」)に委託することができるというが、想定される指定法人やその要件を示してください。

 H広域連合が「確保すべき収入を不当に確保しなかった場合」などは、厚生労働大臣は、当該広域連合に対する交付金を減額するとされているが、具体的に何を指しているのか示してください。例えば、地方自治体が条例で定めた独自の保険料減免制度などは認められるのか、明らかにしてください。

12,

保険外併用療養費について

 @現行の特定療養費を廃止して、保険外併用療養費へ組み替えた理由を明らかにしてください。

 A保険外併用療養費における評価療養と選定療養について、どのような内容を想定しているのか。具体的に示してください。

13,

前項以外の健康保険法等について

 @健康保険の標準報酬月額の上下限の拡大に伴い、その影響を受ける対象人数を示してください。

 A健康保険法のほか、「その他国民の保健医療に関する」法律や政令の規定により罰金刑、
禁固刑以上の刑に処せられたときは、厚生労働大臣は、保険医療機関の指定、保険医登録をしないことができる、とあるが、「国民の保健医療に関する」法律、政令とは何か。具体的に示してください。

14,

医療法について

 (1)医療安全支援センターの設置について

  医療安全支援センターの相談体制、運営について具体的に明らかにしてください。また、設置・運営に要する費用の負担について具体的に示してください。

 (2)社会医療法人制度について

 @社会医療法人が発行する社会医療法人債について、営利法人等が購入する場合の規制について、何か想定しているのか、明らかにしてください。

 A救急医療や医師不足に悩むへき地医療など公益医療の確保のために、社会医療法人債を発行して資金調達することになるのか。本来、公益医療は公的財源によって確保すべきではないのか。

 B現行の医療法第33条にある、国庫が公的医療機関の設置費用の一部を補助する規定を削除した理由を示してください。。 

15,

医師法・歯科医師法について

 @医師、歯科医師について、処分をすべきか否かを調査する必要があると認めるときは、厚生労働大臣は当該病院等に立入り、検査させることができる、とされているが、その具体的な要件を示してください。

 A医療に関する選択に資するよう、医師、歯科医師の指名や政令で定める事項を公表する、とされているが、具体的な内容と公表の方法を示してください。また、個人情報保護法との関連についても明らかにしてください。

16,

社会保険庁「改革」2法案について

 @国民年金保険料の滞納がある場合、国保の短期被保険者証を発行するというが、将来の蓄えである年金と療養を確保するための医療保険は制度の目的がまったく異なる。にも係らず、制度を同列に扱い被保険者にペナルティを課すことの根拠を示してください。

 A保険医療機関の開設者・管理者等に対しても、国民年金保険料の滞納(滞納処分後、滞納が3ヵ月以上続く場合)と保険医療機関の指定・更新を同列に扱い、指定・更新を認めないペナルティを課すことの根拠を示してください。

17,

薬事法について

 @第一類医薬品(わずか11成分)以外のほとんどの一般用医薬品について、薬剤師以外の「登録販売者」の管理下で販売を認めようとしているが、一般用医薬品の緊急安全性情報や副作用情報を消費者である患者に伝達するシステムを想定しているのか。想定していればその内容を明らかにしてください。

 A医薬品販売を 薬剤師のいる薬局・薬店に限定しているのは、副作用の危険を常にともなうため薬剤師が服用方法を説明する必要があるためだが、コンビニ等が店舗販売業の認可を受けて、「登録販売者」を配置すれば、第二類・第三類の医薬品の販売が認められるのか、想定していることを明らかにしてください。

以上