2006年9月26日、安倍晋三首相は、新憲法を制定するためのリーダーシップを発揮して、5年以内に改憲を実現すると公言しました。そして、自民、公明の与党は10月26日、憲法改悪のための国民投票制度と国会法の一部改定を含む「改憲手続き法案」を国会に提出しました。民主党も同日、国会に「対案」法案を提出しました。
今回の改憲手続法案には、憲法審査会を設置する国会法「改正」が含まれており、これにより改憲勢力は、国会で早期に改憲原案作成の審議に入ることが可能となります。
国民投票に関しては、国民から実質的に憲法改正権限を奪う危険な企みが盛り込まれています。そもそも憲法96条が憲法改正を国民投票に委ねているのは、国民主権の原理にもとづき、憲法改正に国民1人1人の意思を十分かつ正確に反映させようとするところにその趣旨があります。しかし、今回の法案は、この趣旨とかけ離れた内容となっています。
法案では、憲法改正案広報協議会の委員の構成比や国費によるテレビ・ラジオ・新聞の無料宣伝スペースを国会議員の議席比で配分するなど、マスコミ利用を含む広報を改憲派の宣伝の場とすることです。また、マスコミによる有料広告をまったく野放しにしています。さらに、公務員や教育者による運動を刑罰によって大幅に制限するなど、主権者である国民の民主的な議論を権力で抑圧するものです。
そのうえ、投票で国民の過半数の賛成という要件については、有権者の過半数ではなく、有効投票数の過半数という最も緩やかな基準を採用し、投票率の制限すら設けないなど、国民全体からみれば賛成が少数であっても、改憲を実現できるようにするものといわざるをえません。
このように、今回の法案は、国民主権の原理を踏みにじり、何が何でも9条の改憲を実現しようとするまやかしの国民投票と言わざるをえません。
全国保険医団体連合会は、「私たちは歴史の教訓に学び、憲法の理念を体して平和を脅かす動きに反対」(開業医宣言)する立場から、今回の改憲手続き法案に断固反対を表明します。