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2006年12月4日
厚生労働大臣
柳澤伯夫殿

全国保険医団体連合会
会長 住江憲勇

宇和島徳洲会病院の病気腎移植問題についての要請書



 愛媛県宇和島市の宇和島徳洲会病院で、病気のために摘出した腎臓を別の患者に移植していたことが明らかになり、移植医療のあり方が問われています。

 報道によれば、一昨年秋からの2年間で11件の病気腎が移植され、すべて親族以外の患者からの移植で、がんに罹患した患者も3件含まれています。腎臓を提供した患者からの同意書は3件、移植を受けた患者の同意書は全くありません。

 厚労省は日本移植学会等と連携して、臓器の摘出、移植が医学的に妥当だったのかどうか等について調査し、年内にその結果をまとめる予定ですが、事実関係を含め徹底した検証と解明が求められています。

 1997年の臓器移植法の施行以来、脳死移植については厳格なルールが定められましたが、生体移植については臓器売買と無許可斡旋を禁止しているだけです。日本移植学会の倫理指針では、臓器提供者が親族以外の場合、病院の倫理委員会で審査し、学会に意見を求めるとしていますが、指針に法的な拘束力はありません。

 今回の病気腎移植の背景には、こうした生体移植に関するルールの不備があることを指摘せざるを得ませんが、同時に、学会の倫理指針からみても大きな問題点を有していると言わざるを得ません。生体移植は原則として親族に限られる点から逸脱し、倫理委員会もほとんどの場合開かれていません。臓器提供者の自発性や移植機会の公平性からみても到底納得できるものではありません。

 宇和島徳洲会病院では、昨年9月に生体腎移植を受けた男性患者が、腎臓を提供した女性に謝礼として現金や車を渡していたとして、患者と仲介した女性を臓器移植法違反で逮捕する事件が起きており、今回の倫理にもとる臓器移植で、移植医療に対する国民の信頼が失われることを危惧します。

 本会は、移植医療に対する国民の信頼を回復し、安全、安心な移植医療の確立のために、下記の項目について要望します。


1. 今回の事態について、臓器摘出及び移植の妥当性などについて徹底した検証と解明を行い、情報を公開すること。

2. 臓器移植の医学的な適応基準や自発的な意思の確認方法、第三者機関による審査の義務づけなど、生体移植についてのルール整備を行うこと。