2007年2月18日 1、文書提供に対する調査結果は調査本来の目的を適確・十分に果たしていない 中央社会保険医療協議会は、1月31日に同検証部会を開き、@医療費区分が明記された領収証の発行、A後発医薬品の状況とともに、B「歯科診療における文書提供に関する患者意識調査結果概要(速報)」を報告した。 本調査の目的は、@歯科医師の文書作成・提供にかかる時間の把握、A文書提供によりきめ細かい情報提供を行うことの効果の把握であった。 しかし、公表された結果概要(速報)はこの2点の目的を適確かつ十分に果たすものとなっていない。従ってこの結果だけをもとに、歯科診療における文書提供の在り方を判断するならば今後の歯科保険医療に禍根を残しかねない。それは次に述べる理由からである。 施設対象調査で、1日当りの文書提供患者数・作成時間の平均は6.91人・35分という結果が示された。この数値は日歯の全会員緊急アンケート調査結果(11人・66分)や岡山県保険医協会歯科部会の調査結果(16.7人・94分)、昨年の通常国会で報告された桜井充参議院議員調査結果(18人・93分)などと比較して極端に少ない。こうした乖離は、医療機関では文書提供が要件となっている指導料算定を月初めに行う場合が多いにもかかわらず、中医協調査では月半ばの1週間を調査期間としたことによる。それゆえ、この調査結果だけで歯科医師の文書作成・提供にかかる時間が適確に把握できたとはいえない。 また患者調査では、有効回答数・率は2200人・44.0%との結果が示された。しかし、概要(速報)文書でも「健康保険組合の被保険者を対象としているため、性別に偏りが生じている」と注釈を付しているように、男性回答者1915人(87.0%)、女性269人(12.2%)と男性回答者が圧倒的となっている。しかも男性回答数の年齢別内訳も60歳以上が919人と半数近くを占めている。従ってこの結果だけをもって文書提供に対する全年齢層の患者の意識を代弁しているとはいえない。こうした問題は、調査対象を1健保組合の被保険者とした調査設計そのものにある。 上述のような問題点を内包しつつも、本結果概要(速報)を中医協検証作業に反映するには、今後も「同じような文書をもらいたい」(39.5%)と「もらいたいが2回目以降は大きな変化時でよい」(35.8%)との回答が拮抗している点、「満足していない理由」で「口頭の説明で十分」(50.0%)、「口頭での説明が少なくなった」(38.5%)、「いつも同じような内容」(36.5%)との回答結果を十分に検討すべきである。 2、欠かせない歯科疾患総合指導料算定率の低い検証 また06年度歯科診療報酬改定結果の検証では、歯科疾患総合指導料に関する検証は欠かせない。そのことは、昨年の中医協答申書の中でも「6、新たに設定された診療報酬項目を始めとして、改定項目に係る検証を確実に行うこと」としていた点からも当然の措置である。しかも中医協検証部会では当初、文書提供に関する特別調査の中で、歯科疾患総合指導料算定医療機関及びその医療機関に受診した患者を特定し、アンケート調査を企画していたが、届出医療機関数の割合が6割強の中で医療機関の算定率は厚労省の担当者も認めるように5%程度と「か初診」の算定率(65%)と比較しても極端に低い理由から調査方法が変更された。こういう経緯からいっても妥当である。我々は、このような歯科疾患総合指導料届出率と算定率の極端な乖離は政策上の誤りで、廃止すべきと考える。中医協においても歯科疾患総合指導料について適確、十分に検証を行い、速やかに廃止するよう要求する。 3、改定率の検証も必要 さらに改定率の検証とその結果に基づいた緊急対策が必要である。2月5日に厚労省保険局調査課より公表された「平成18年4月〜9月 概算医療費の伸び率」データによれば、医科、歯科、調剤とも対前年度比医療費の伸び率がマイナスとなっている。とくに歯科医療費に関しては、医療費指標のうち改定の影響を色濃く反映するとされている「1日当り医療費」が連続半年間、1.9%~2.5%のマイナスとなっているからである。 以上、中医協における06年度歯科診療報酬改定結果の検証では、上記の点について適確、十二分に行われるようにするとともに、国民の歯科医療要求に応えて歯科医療機関が役割を発揮でき、経営維持が図れる保障としての緊急再改定を実施するよう、中医協として厚労大臣へ建議を行うことを強く望むものである。 以上 |