2007年8月7日
原爆症認定集団訴訟についての要請書
貴殿におかれましては連日、国政の重責を果たされておりますことに敬意を表します。本会は、全国の保険医10万人余の団体です。 さて、ご承知の通り、7月30日熊本地方裁判所は、原爆症認定集団訴訟に対し、21人中19人の原告に対し、却下処分取り消しの判決を下しました。 昨年の大阪、広島、今年に入ってからの名古屋、仙台、東京に続く原告勝訴の判決です。いずれも「認定基準の機械的運用は、放射線リスクの過小評価をもたらすおそれがある」などと、国の原爆症認定行政を断罪しています。 62回目の広島への原爆投下を迎える8月6日を前に、安倍首相は5日、広島市内で県内の被爆者7団体との懇談し、「原爆症認定のあり方について、専門家の判断のもとに改めて検討し、見直すことを検討している」「国として何ができるのか検討したい」と述べました。安倍首相が、認定の見直しを明言したことは極めて重い発言です。 国は裁判で6連敗(集団訴訟以前も含めれば13連敗)中です。 原爆症集団訴訟は、現在266人が、15地方裁判所、5高等裁判所で国と争っています。しかし提訴以来すでに35人が亡くなられています。国が控訴をしてこれ以上裁判を長引かせ、解決を先送りすべきではありません。 日本の被爆者の証言は、世界で二度と核戦争の惨事を引き起こさないために、大きな抑止力となり、世界の共通した願いになっています。唯一被爆国で、憲法9条をもつ日本政府がおこなう被爆者援護行政と平和外交に世界の各国政府と諸国民が注目しています。 8月6日の広島市での平和記念式典で、秋葉忠利広島市長が読み上げた平和宣言では、「唯一の被爆国である日本政府には、まず謙虚に被爆の実相と被爆者の哲学を学び、それを世界に広める責任があります。同時に、国際法により核兵器廃絶のため誠実に努力する義務を負う日本国政府は、世界に誇るべき平和憲法をあるがままに遵守し、米国の時代遅れで誤った政策にははっきり『ノー』と言うべきです。」と強調しました。 同じく安倍首相はあいさつのなかで、「今後とも、憲法の規定を順守し、国際平和を誠実に希求し、非核三原則を堅持していく」ことを表明されました。 以上の点をふまえ、私たちは、「歴史の教訓に学び、憲法の理念を体して平和を脅かす動きに反対し、核戦争の防止と核兵器廃絶が現代に生きる医師の社会的責任である」(開業医宣言)の立場から、以下要望します。 記 1、熊本地裁判決に対して控訴せず、大阪、広島、名古屋、仙台、東京の控訴は取り下げて下さい。 2、被爆者援護行政と原爆症認定制度を抜本的に見直して下さい。 3、緊急課題として国連と核保有国をはじめ、すべての国の政府に対し、核兵器全面禁止・廃絶の国際協定の実現にむけ、日本政府として働きかけて下さい。 |