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薬害C型肝炎訴訟 和解骨子案について

2007年12月14日
全国保険医団体連合会
副会長 川崎美榮子

 血液製剤を投与され、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染したとして、国と製薬会社に損害賠償を求めた薬害C型肝炎訴訟で、大阪高裁は、12月13日、原告及び被告の国と製薬会社に対して和解骨子案を提示した。
  報道によれば、和解骨子案は、フィブリノゲン製剤の投与をめぐって国と製薬会社の責任が生じた時期について、1985年4月の治験品の配布開始から、1988年6月に緊急安全性情報の配布が終了するまでの間に限定するものであり、被害者全員の救済を求める立場から、到底容認できるものではない。
  政府は、11月7日の和解勧告を受けて、総額30億円の解決金の支払いと追加提訴者に対しては、法的責任を1985年8月から1988年6月に限定した東京地裁判決に基づいた救済を主張していたが、今回の和解骨子案はそうした方向にそったものと言わざるを得ない。患者さん自身が薬剤の取り扱いを知ることは不可能であり、国の責任を限定することはできないのである。和解骨子案は、集団感染から20年、裁判提訴から5年が経過した薬害C型肝炎訴訟の全面解決に向けた第一歩になるどころか、被害者を製剤の種類や投与時期、提訴時期で線引きする不当なものである。
  福田康夫首相は、薬害C型肝炎訴訟についての国の責任を認め、舛添要一厚労相も、フィブリノゲンだけではなくクリスマシンで感染した患者も含めて、全面解決する意向を示していたはずである。
  大阪高裁は和解骨子案提示にあたっての所見で、「全体的解決のためには原告らの全員一律一括の和解金の要求案は望ましいと考える」とも指摘している。
本会は、12月2日、「薬害C型肝炎の早期全面解決を求める理事会声明」を採択したが、改めて、政府に対し、「医薬品の安全性・有効性の確保に最善の努力を尽くす」と誓った薬害エイズ事件の教訓を想起し、被害者の全員救済に向けて全力をあげることを強く求めるものである。