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これでは「医療崩壊」は止まらない 診療報酬改定率の政府決定について

2007年12月18日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

 

 福田内閣は、12月18日、舛添厚労相と額賀財務相の閣僚折衝で来年4月の診療報酬改定で本体部分を0.38%引き上げる方針を決定した。薬価・材料費を1.2%引き下げるため、全体では0.82%の減となり、4回連続のマイナス改定となる。医科、歯科、調剤の改定率は、それぞれ0.42%、0.42%、0.17%である。
財務省や経済財政諮問会議の民間議員が診療報酬本体の引き下げを強く求めるなかで、中医協が「本体部分のマイナス改定は避けるべき」との意見書をまとめ、本体プラス改定の政府決定となったことは、患者、国民、医療担当者の「ストップ医療崩壊」の願いと運動の反映である。
しかし、改定率総枠▲0.82%では、「医療崩壊」はストップできるところではない。さらなる医療崩壊の連鎖をもたらすことを指摘せざるを得ない。
産科や小児科、救急医療提供体制の減少や、“歯科医師5人に1人がワーキングプア”といわれる状況の出現など、「医療崩壊」の根本原因は、欧米諸国に比べて低い医療費をさらに抑制した結果である。
進行する「医療崩壊」にストップをかけることが国民的課題であり、国民の命と健康に責任を持つべき政府が採るべき対策は、診療報酬を引き上げることである。
こうした中で、国の医療費負担を2200億円も削減することは、政治の責任放棄であり、強く抗議する。
なお、診療報酬改定の中身として、開業医の診療報酬を削減して、勤務医の負担軽減を図ることが検討されている。
勤務医の負担軽減は大変重要であるが、そのために、ただでさえ厳しい経営状況になっている開業医をさらに追い込み、地域医療を崩壊させることがあってはならない。勤務医の願いは、交代勤務可能な体制の確保であり、そのための原資となる病院の診療報酬の引き上げである。2008年改定にあたっては、初・再診料を基礎的技術料として評価し、医科・歯科とも引き上げるよう、要望するものである。
「診療報酬」は、患者さんが医療保険で受けられる診療の内容を決めるものであり、診療報酬の改定率は、患者さんへの医療内容を良くするのか、抑制するのかに直結する。
だからこそ、国会論戦における審議が求められる。国会において、「医療崩壊」を解決する観点から診療報酬改定率について正面から議論し、緊急に財源措置を行い、引き上げるよう強く求めるものである。