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2008年4月21日
内閣総理大臣 福田康夫 殿 
厚生労働大臣 舛添要一 殿 

全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

原爆症認定制度の抜本改定による真の被爆者救済を求める
要望書

 

 厚生労働省は4月7日、新基準「新しい審査の方針」にもとづく初審査をおこない、69人中63人を原爆症と認定し、6人を保留としました。
今回の新基準の策定の背景には、現在、全国15地裁、6高裁で争われている原爆症認定集団訴訟で被告の国・厚労省が敗訴を重ね、これまでの基準の見直しを迫られ、今年4月1日より実施するとしたものです。「新基準」では、これまで切り捨て認定の根源であった「原因確率」を審査には用いないとしたこと、また残留放射線の影響を認めたことは重要な前進です。
  しかし原告や被爆者団体が強く批判するように、「積極認定」の範囲を@爆心地より3.5キロ以内で被爆、A100時間以内に爆心地から約2キロ以内に入市などと線引きし、対象疾病も悪性腫瘍、白血病など5つに限定していることは重大な問題です。また、「積極認定」以外については個別審査をおこなうとしていますが、条件に推定不可能な被曝線量をあげるなど、その判断基準について危惧せざるをえません。
  原爆症認定の「新基準」の実施にあたっては、前文で述べているように「被爆者救済の立場」「被爆の実態に一層即したもの」が貫かれることが重要だと考えます。
被爆後62年余が経過し、平均年齢も74歳となっている被爆者に残されている時間は多くありません。しかも国・厚生労働省は、長年にわたる切り捨て行政に加え、「審査」の名で申請書類を放置したり、まともな個別審査もないまま却下するなどの仕打ちを重ねています。
  いま国と厚労省がおこなうべきは、これまでの「切り捨て」行政の深い反省の上に救済と被爆の実態を直視した行政への抜本的な転換をはかることである。明示的に「積極認定」の対象になっていない被爆者にも柔軟な判断によって救済をはかるとともに、実情に基づいて「積極認定」の枠を広げる方向を明確にするなど、転換の姿勢を示すべきです。
世界で二度と核戦争の惨事を引き起こさないために、日本の被爆者の証言は大きな抑止力となり、世界の共通した願いになっています。唯一被爆国で、憲法9条をもつ日本政府がおこなう被爆者援護行政と平和外交に世界の各国政府と諸国民が注目しています。
今年7月、北海道洞爺湖で開催される主要国首脳会議(G8)において、開催国であり、唯一の被爆国である日本政府の果たすべき役割はたいへん重要です。
私たちは、「核戦争の防止と核兵器廃絶が現代に生きる医師の社会的責任であることを確認する」(開業医宣言)との立場で、地域医療のなかで長年、被爆者に寄り添い、被爆者医療と集団訴訟に携わってきた医師、歯科医師の団体として、以下要望します。

1、被爆の実態を直視した認定行政に抜本的転換をはかり、被爆者全員救済をおこなうこと。また、「新基準」での審査とは別に、厚生労働大臣がすべての原告の認定を決断し、裁判の早期・全面解決をすること。

2、日本政府が、G8での首脳会議および関連閣僚会議において、「核兵器廃絶」を議題として提唱し、緊急課題として国連と核保有国をはじめ、すべての国の政府に対し、核兵器全面禁止・廃絶の国際協定の実現にむけ、すみやかに協議を開始するよう働きかけること。また、この機会に被爆者代表にも参加してもらい、被爆写真展示などを企画するなどして、核の惨禍の実相を広く国際的に知らせること。