ホーム

医療費抑制を目論む「社会保障カード」導入を前提とした調査は
直ちに中止を―-医療機関においては調査協力しないよう切望する
 

     

2008年9月22日
全国保険医団体連合会
政策部長 津田 光夫

 厚生労働省の社会保障カード(仮称)の在り方に関する検討会が8月29日、「議論の整理(案)」をまとめた。しかし、「異論が噴き出し合意の難しさを浮き彫りにした」(毎日新聞9月1日付「社説」)と報道されているように、検討会として結論を得たものではない。
 検討課題に盛り込まれた「医療機関、保険者等の環境整備をどう進めるか」「現行の保険証等からの切り換えに伴うリスクの分析」のほか、ICカード・オンライン導入に伴うコストの試算及び、費用負担の在り方など6項目についても、具体的な議論の中身は、国民や医療関係者にほとんど伝わって来ていない。
 ところが、厚生労働省は突然9月に入り、「社会保障カード(仮称)の導入効果の試算の基礎資料にする」として、1万4,200の医療機関及び薬局を抽出して、10月8日を回答期限にした調査を始め、@資格返戻やそれに起因する未収金の発生、A返戻レセプトの確認・再請求作業にかかっている時間・人数・コスト等を把握するとしている。
 説明文では、2011年度から実施されようとしているレセプトオンライン請求義務化を既定の事実として、事務コストの削減や未収金の発生を抑えることができる利点をことさら強調し、多くの医療関係者が賛成しているという結果を引き出そうとしている。
 しかし同調査は、検討会の議論の到達点からみれば、余りにも拙速であると言わざるを得ない。調査内容を十分に検討した形跡もうかがえない。導入に伴う費用試算を行う基礎資料となりうるのかはなはだ疑問である。
 一方では、外来管理加算の「5分ルールのデーター流用」問題が解決していない状況で、今回の調査結果で検討会の議論が左右される可能性もある。
 社会保障カードの導入は、2001年6月に閣議決定された医療費抑制などを目的とする「社会保障個人会計」の構築を目指したものである。そのための布石として、カード導入を前提とした今回の調査は直ちに中止すべきである。合わせて、医療機関においては調査に協力しないよう切望するものである。
 厚生労働省は、2008年度末までに社会保障カード導入の基本計画をまとめるとしているが、国民生活や地域医療に大きな影響を与えるだけに、住基カードの教訓も生かし、慎重かつ十分な検討を進めることを強く要望する。