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政治の流れを変え、保険で良い歯科医療」の実現を目指す決議



 今年4月の歯科診療報酬改定では、27万筆を越える「保険で良い歯科医療」を求める国会請願署名、16%を超える地方議会意見書採択、「歯は命10.28決起集会」など歯科医療危機突破の諸運動を取り組み、こうした運動が反映し技術料本体のマイナス改定を阻止した。しかし、わずか0.42%の引き上げでは今日の危機的な歯科医療機関の経営改善には程遠く、大幅引き上げによる歯科医療費総枠の拡大を行う以外根本的な解決はありえない。
 このことは社会保障費2200億円の削減の撤廃を求める声が、日医、日歯など医療界全体の強い要望としても示されていることからも明らかである。
 一方、こうした現実を前に「補綴の保険外し」や混合診療拡大の声が日本歯科医学会等から聞こえるが、これらの意見は歯科医療費総枠拡大の課題を放棄し、自費を負担できる患者と、そうした患者を担える限られた歯科医療機関だけに歯科医療を限定する考え方かたといわざるをえない。
 日本医療政策機構の調査でも、窓口負担を理由に低所得者層の4割が「具合が悪くても受診を控えた」に示されているように3割負担統一の結果、必要な受診が抑制されている。この上「補綴の保険外し」や「保険外併用療養制度の有効活用」で患者の負担が増えれば、今以上に患者を歯科治療から遠ざけてしまうことは明らかである。必要な医療を誰もが受けられるという国民皆保険制度を根幹から破壊し、医療に格差を持ち込む「補綴の保険外し」混合診療の拡大は断じて認められない。
 更に、離職者の増大、歯科技工士学校の廃校など厳しい状況の中にある歯科技工所・技工士の経営と労働環境を、安全性の保障のない海外からの輸入技工物が一層追い詰めている。近い将来の国内技工体制の崩壊が危惧されるだけでなく、こうした事態が放置されていけば「保険で入れ歯」を作ること自体も困難になってしまう。

 こうした歯科医療の崩壊の進行にとどまらず今日、国民生活のあらゆる分野で、政治のゆがみが噴出し深刻化している。
 とりわけ後期高齢者医療制度に対する国民的批判と怨嗟の声はますます大きくなっている。総選挙を前に政府与党は小手先の見直しで世論の批判をかわそうとしているが、制度の問題点の根本的解決には廃止以外に道はない。
 昨年の参議院選挙以降、医療界、国民の中に新しい政治を求める声が大きく広がっている。行き詰った政治を正すにためには、解散、総選挙により国民の審判を問うべきだとの声は全国に広がっている。
 このため、保団連は今日のゆがんだ政治の流れを変え歯科医療崩壊を阻止し、患者・国民が必要とする「保険で良い歯科医療」の提供が行えるよう、下記事項の実現を強く求める。


1、年齢で差別する後期高齢者医療制度を廃止し、老人保険制度に戻すこと。
2、今年4月の歯科診療報酬改定では、歯科医療機関の疲弊状況は到底解消されないため、歯科医療崩壊の危機を打開する財政措置を講じ診療報酬を緊急に引き上げること。
3、患者・国民の願いに応えて「保険外併用療養費制度」の拡大や「補綴の保険外し」は行わず、「歯科の保険の利く範囲を拡大」すること。
4、安全性の保障された「歯科技工物」の確保のために、「平成17年通知」を撤回すること。
5、社会保障予算2200億円の削減をやめ、医療・福祉など国民生活にかかる予算を増やし、社会保障・公的医療保険制度を拡充すること。

 

2008年10月26日
全国保険医団体連合会
第10回保団連歯科全国交流集会