公的医療保険制度の否定につながる麻生首相の暴言に断固抗議する
2008年11月28日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇
麻生首相は、地域医療を守る医師に対して「社会的常識が欠落している」と誹謗する暴言を行った翌20日に、「たらたら飲んで、食べて、なにもしない人の分の金を何で私が払うんだ」と病気にかかった患者や高齢者を非難する暴言を繰り返した。
首相の発言ならば、病気や障害を抱えている人は、その人の自己責任ということになる。難病や重い病と闘っている患者や、加齢に伴い複数の病気に同時にかかっている高齢者に対して、不養生だから病気にかかったと非難し、自己責任が足りないとする暴言は、患者や高齢者に対する基本的な認識を欠いたものである。
最大の問題は、わが国の公的医療保険制度の否定につながる発言であるということである。首相が主張するように、病気にかかっていない人が、健康保険料や税金を「何で私が払うんだ」と言い出したら、公的な医療保険制度は成り立たない。国民のいのちと健康に責任を持つべき、一国の総理として失格と言わざるを得ない。
しかも、首相発言があった経済財政諮問会議には、与謝野、鳩山、中川、舛添、河村各大臣やトヨタ自動車会長らが出席していたにも係わらず、誰一人として問題視しなかったことである。わが国の政財界のトップの本音と受け止められる。
そもそも、健康や病気は自己責任という考えは、この間の、政府・厚労省による医療費抑政策と、今年度から開始した「医療費適正化計画」の柱をなすものである。首相発言は、医療に市場原理を持ち込む「構造改革」路線を端的に言い表したものといえる。
首相は、発言の撤回と謝罪で済ませることなく、早急に毎年2200億円の社会保障費の削減を止め、医療費抑制政策を転換し、すべての国民が安全で質の高い医療が受けられるよう公的医療保険制度を充実させるべきである。