与党の水俣病問題に関する「特別措置法案」に断固反対する
2009年3月18日
全国保険医団体連合会
公害環境対策部長 野本 哲夫
水俣病は公式確認から半世紀以上が経ち、いま、被害者救済は喫緊の課題となっている。こうした中、3月13日、与党プロジェクトチームは、水俣病の「最終解決」をはかるとして水俣病特別措置関連法案を衆議院に提出した。しかし、法案は、未認定患者救済とは名ばかりで、被害者を大量に切り捨て、加害企業チッソを救済するためのものと言わざるを得ず、到底容認できるものではない。
第1に、水俣病の現行の公害健康被害補償法上の認定基準については、最高裁が「1つの症状」による認定基準を示し救済したにもかかわらず、法案は「2つ以上の症候」という現行基準を依然変更していないこと、さらに認定申請については、3年を基準とした一定の期間を過ぎれば、その後は一切の救済に応じないとしていること。以上の点において法案は、患者の大量切り捨てを図ろうとするものと断ぜざるを得ない。
第2に、チッソをいずれ清算に向かう補償のための親会社と収益を上げる子会社に分社化することは、加害原因企業を救済し企業責任を免罪するものであり、今後は、被害者が加害者チッソに対する損害賠償請求裁判などを不可能とさせるものである。
第3に、救済措置は、最高裁判決の賠償水準はもとより1995年の「政治決着」をも下回るきわめて低い水準であるなど、多くの問題を含んでいる。
これらは、2004年の水俣病関西訴訟最高裁判決が国・県・チッソの加害責任を断罪し、現行の認定基準を事実上否定し幅広い救済を認めたにもかかわらず、この司法決定を無視し、幕引きを図ろうとするものである。
いまこそ、多くの患者の切り捨てと救済の幕引きを許さず、水俣病の早期・完全救済を図るため、認定基準の見直し、徹底した不知火沿岸の住民健康調査の実施など国と自治体、企業の責任を明確にした真の解決策を求めるものである。