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介護給付費削減を目的とした新認定方式の即時中止を求める

2009年4月20日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

 4月13日に厚生労働省は、@1次判定「非該当」者が2次判定で重度に変更される割合を10%減らせば84億円削減、A認定の適正化などで2〜300億円削減、B現在の5:5となっている要支援2と要介護1の割合について、介護認定審査会委員の関与を減らし当初想定していた7対3に近づける、等とした厚労省の内部文書の存在を公式に認めた。

 この文書は共産党の小池晃参議院議員が入手し、4月2日の厚労委員会で「要介護度を低くして給付費を抑制する狙いは明白」と追及し、舛添厚労大臣が調査を約束していたものである。
調査結果について厚労省は、「介護報酬改定がプラス改定の場合には老健局内で財源確保策が求められる可能性があったことから、平成21年度予算要求の検討に当たり、実現可能性は問わず老健局内における議論のための材料として作成した」としている。

 これは、政府の政策決定の前に介護報酬の抑制を目的とした認定方式の見直しや制度運営の改悪を老健局が検討していたことを公式に認めたものであり、大問題である。
内部資料には、「要介護1、要支援2の判定を行うことのできる一次判定ソフトを作成し、介護認定審査委員の関与を減らし、地域差をなくすとともに当初想定していた割合(要支援2と要介護1の割合が7:3)に近づける」との記述がある。

 これは、新認定方式が何を目的に検討されてきたのかを示すとともに、介護認定審査会の運営そのものを大きく変えようとするものである。
厚労省は、第2次モデル事業で新方式による判定が「7対3の割合にはなっていない」と述べているが、今後の介護認定審査会への関与によって7対3に近づけていく危険性も大きい。
さらに、厚労省の課長が認定調査項目の削除を決めた検討会で「省力化、簡素化ということも大事だ」と述べており、新認定方式導入の目的が、本来あるべき利用者の介護の必要性を正確に把握するためではなく、コストの削減にあることを明らかにしている。

 こうしたコスト削減ありきで新認定方式が検討されてきた背景には、毎年2200億円の削減を強いてきた社会保障費抑制政策にあることはいうまでもない。
一方、4月13日に開催した「要介護認定の見直しに係る検証・検討会」の初会合で舛添厚労大臣は、新しい認定により要介護度が軽くなり、それが利用者の希望にそぐわない場合などは、検証が終わるまで従来の基準を適用する経過措置を取る考えを示した。

 しかし、これでは、@まったく新たに認定を受ける人の認定結果についてはなんの手立ても取られない、A申請制度であることから、救済できない場合がある。
こうした小手先の対策を採るのではなく、新認定方式を即時中止するなど、次の対策を採るよう、強く要求する。

一 新認定方式を即時中止し、当面は従来の認定方式に戻すこと。
一 認定者の割合について、自治体に指導や誘導を行わないこと。
一 介護認定審査委員の関与を減らすような改悪を行わないこと。
一 認定方式の見直しを行うこと。
一 諸悪の根源である社会保障費2200億円削減の閣議決定を廃止すること。