平成20 年社会医療診療行為別調査の「1日当たり点数」の
対前年比較に関する考察
―メディアス最新データをもとにした外来管理加算減収額の推計―
2009年7月28日
全国保険医団体連合会理事 本田孝也
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平成21 年7 月15 日の中医協において、平成20 年社会医療診療行為別調査結果とメディアスとの乖離が報告され、検証チームの設置が決定された。
社会医療診療行為別調査において総点数と総件数とは異なった計算式によって推計されるが、総点数と延診療実日数はともに同一の計算式により推計されるため、「1日当たり点数」により前年との比較が可能となる。
しかし、平成20 年及び平成19 年の社会医療診療行為別調査結果をもとに、「入院外1日当たり点数」を「病院」と「診療所」に分けて対比したところ、奇妙な現象が発生していた。「入院外1日当たり点数」のうち、「検査」の項目を例にとって比較すると、平成20 年は平成19 年と比較して、病院では△2.84 点、診療所では△4.34 点であるにもかかわらず、病院+診療所の合計ではプラス0.1 点となっている。
このように、「1日当たり点数」を比較する場合、「病院+診療所」と合計した値をもって比較することはできない。比較は「病院」、「診療所」個々に行うべきである。
平成20 年の「診療所」の「1日当たり点数」の中で「初・再診」の増減点数を見ると、平成19 年に比べて△8.17 点である。
社会医療診療行為別調査とメディアスとの乖離の原因のひとつと考えられる透析の要素を除外すると、「診療所」の「1日当たり点数」の「補正総数(診療所)」は589.55 点となる。これに対する「初・再診」の増減率は△1.39%とである。
メディアスの最新データによれば、平成20 年度の診療所の1 年間の入院外総医療費は7 兆5,782 億円である。「初・再診」△1.39%より減収額を推計すると、7 兆5,782億×0.0139=1,053 億円となる。
診療所の初再診料は据え置かれているので、上記減収は外来管理加算の算定要件変更に由来するものであると考えられる。
「補正総数(診療所)」=589.55 点を平成19年と比較すると、増減点数は2.03 点増、増減率は0.35%増となる。これは、メディアスの平成20 年の診療所の対前年度比の0.3%増とほぼ一致する。
メディアスによると診療報酬改定のない平成17 年度、19 年度では各々2.7%、2.2%の自然増を示しており、0.3%増は実質的にマイナスになる。そして、その大きな主因をなったのが外来管理加算であることは論を待たない。
平成20 年社会医療診療行為別調査の「総点数」「総件数」がメディアスと乖離した理由については検証チームにより今後原因が究明されるであろうが、外来管理加算の影響額については「1日当たり点数」の前年対比により試算可能である。
中医協はいたずらに議論を先延ばしすることなく、外来管理加算の算定要件に関する議論を再開すべきであり、厚生労働省は5分ルールを即時撤廃すべきである。
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