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新要介護認定基準の修正だけで済ませてはならない

2009年8月4日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇


  7月28日に開催された「要介護認定の見直しに係る検証・検討会」において、新認定基準の大幅な修正案が示され、10月から実施されることが了承された。
「生活習慣等によって行為が発生していない場合」は、新認定基準では「介助なしを選択して状況を特記事項に記載」しなければならなかったが、修正案では「類似の行為で評価できる」に変更されるなど、評価軸そのものが見直される。

また、新認定基準では、「座った姿勢を1分程度保てる」だけで、座位の保持が“できる”とされていたが、修正案では「座った姿勢を10分程度保てた場合」に、“できる”とされるなど、個別調査項目17項目について定義の見直しが行われた。

新認定制度実施後わずか4ヶ月で、こうした修正が実施されたことは、新認定制度に対する批判とその改善を求める世論の反映である。同時に、認定が軽度に出ることが様々な調査でも明らかであり、新認定制度の目的が給付抑制にあることが糾弾されていたにもかかわらず実施を強行し、利用者、サービス提供者、自治体関係者に大きな負担と混乱を与えた厚生労働省の責任は重大である。

しかし、これで問題が解決するわけではない。修正した新認定方式の実施は10月からであり、それまで新規申請者は、修正前の新認定方式が適用される。

検討会に報告された調査結果では、一次判定で非該当と判断された新規申請者は11.4%で、2005年から2008年まで(6%前後)の2倍、二次判定で非該当と判断された新規申請者も5.0%で2005年から2008年まで(2〜3%前後)の2倍になっており、従来方式と比べて明らかに一次で軽度と判定される率が高く、二次でそれが修正できなかったことが判明している。

このままでは、9月末までは新規申請者の要介護認定は、修正されない認定基準で実施せざるをえない。
厚生労働省は、修正した認定基準によるシミュレーションの結果、「ほぼ、4月改定前に戻った」と説明しているが、実際の認定調査を踏まえたものではなく、10月以後の修正された認定基準で本当に問題が解決されているのかは、まだ不明である。

なお、今回の見直しの発端となった厚生労働省の内部文書では、@二次判定で重度に変更される割合を10%減らせば84億円削減、A認定の適正化等で2〜300億円削減、B現在の5:5となっている要支援2と要介護1の割合について、認定審査会委員の関与を減らし、当初想定していた7:3に近づけるなどが記載されていた。

こうしたことから、当会は、次の対策を採るよう、強く要求する。

一 10月までの間、新規申請者が軽度に判定されないような対策を直ちに取ること。
一 10月から修正した認定基準に変更した場合にも、経過措置を終了させないこと。
一 上記が実施できない場合は新認定方式を即時中止し、当面従来の認定方式に戻すこと。
一 認定基準だけでなく、認定調査、一次判定、ニ次判定で構成される認定システム全体に対する総合的な検証と見直しを行うこと。
一 認定者の割合について、自治体に指導や誘導を行わないこと。
一 認定審査会委員の関与を減らすような改悪を行わないこと。