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地域医療の確保のため、診療報酬の大幅引き上げを求める


2009年11月29日 
保団連地域医療活動交流集会決議

小泉構造「改革」以来の社会保障費抑制政策によって診療報酬が大きく引き下げられてきた結果、医療従事者の労働条件悪化など医療提供体制全体が疲弊し、患者・国民の医療を受ける権利が大きく阻害されています。
1980年代から続く医療費抑制政策に加えて、小泉構造「改革」による診療報酬の大幅削減により、急性期病院の勤務医は過重労働・低賃金におかれていますが、中小病院や医科・歯科診療所についても、大変厳しい経営状況となっています。
このままでは、地域医療が崩壊してしまいます。この状況を打開するためには診療報酬の大幅引き上げがどうしても必要です。
ところが11月19日に財務省が発表した「医療予算について」では、@公務員給与のカットやデフレの改定率への反映、A収入が高い診療科の報酬見直し、B開業医と勤務医の平準化、などを求めています。同日の記者会見で野田佳彦財務副大臣は、「医師の偏在や不足の問題には本体部分の底上げではなく、配分の見直しで対応する」と述べました。
しかしこの論拠としている「開業医の年収約2500万円に対して勤務医の年収約1500万円」との資料は、病院の勤務医と医科診療所の所長を比較したものです。診療所長と比較するなら同じ経営者である病院長と比較すべきです。医療法人による比較では、病院長より診療所長の給与が低く、病院勤務医より診療所勤務医の給与が低いという事実を隠しているのです。
また、個人開業医は、収支差額から什器・備品の買い替えや新たな設備・機器導入の費用に関わる借入金返済、退職金積み立てなどの費用を捻出しなくてはなりません。さらに、医科診療所(無床診療所・個人)の収支差額の最頻値は直近データで月124万円です。まして、医療従事者と年齢分布も職種も異なる公務員給与のカットを診療報酬に反映させるべきではありません。
もちろん、勤務医の労働条件は大変厳しく、この状況を改善するためには病院の診療報酬の大幅な引き上げが絶対に不可欠です。しかし、この間の診療報酬抑制で、勤務医だけでなく開業医も窮地に陥っています。開業医の月平均時間外労働は過労死ラインといわれる月80時間を超える82.82時間(保団連「労働実態調査」)で、開業医の経営も労働条件も大変厳しい状況に陥っています。
歯科はさらに深刻で、平均収支差額は過去10年間で11.9%も下がっており、歯科診療所(個人)の収支差額の最頻値は直近データで月76万円です。このような状況では10%以上の診療報酬引き上げが絶対に必要です。
なお、収入が高い診療科の報酬見直しが求められていますが、各科毎のサンプルが数十医療機関しかなく、収入には自由診療や介護収入も含まれており、こうしたデータを元に診療報酬見直しを実施すれば、大変なミスリードをしてしまいます。
小泉構造「改革」以後4回の診療報酬改定率の合計は、2001年対比でマイナス7.53%になります。仮にマイナス改定がなかった場合と比べた医療費の削減額は13兆円にものぼります。このことが「医療崩壊」を生み出した最大の原因です。まず、医療費の総枠を拡大することが新政権にとって最重要課題です。
なお、財政制度審議会・事業仕分けでは、漢方・ビタミン・湿布薬等の市販品類似薬の保険給付外しや、入院時の食費・居住費の患者負担拡大が事業仕分けの結論とされました。
しかし、市販類似薬を保険から外せば、必要な医療が医療機関で行なわれず病状悪化を招く危険性があります。副作用への対応など医療安全管理からも大問題です。また、入院時の食事は治療の一環であり、療養環境の確保は入院医療の提供に不可欠です。
こうした患者負担増は、小泉構造「改革」路線と同じ発想であり絶対に容認できません。
以上を踏まえ、来年度予算編成にむけて社会保障予算を拡大し下記事項の実現を求めるものです。

一、地域医療の底上げが図れるよう、病院、医科・歯科診療所を問わず診療報酬を大幅に引き上げるとともに、患者の窓口負担を軽減して下さい。

一、「高い収入」の診療科の報酬見直しはやめてください。

一、市販類似薬の保険給付外しや、食事・居住費の患者負担拡大を行わないでください。