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カネミ油症被害者の救済を求める

2009年12月6日
全国保険医団体連合会理事会

1968年に発生したカネミ油症事件は、カネミ倉庫が製造した食用油にPCBやダイオキシン類が高濃度に混入したことによって起きた、人類が初めて体験した未曾有の食品中毒(公害)事件である。発生時14,000人の届出があったとされているが、認定患者は現在約1,900人で15%にも満たない。
しかも、汚染原因企業のカネミ倉庫及びPCBを製造したカネカ、そして国の賠償責任を求めて、過去に多くの裁判が提訴されたが、1987年の国に対する訴訟の取り下げによって、油症事件は終わったかのように受けとめられている。
しかし、油症事件は未だに解決してはいない。食中毒事件でありながら、他の公害事件と異なり、油症被害者を救済する法律はなく、国などによる公的な支援策も何ら実施されていない。
昨年、国は初めて認定患者1,300人を対象にした健康実態調査を実施することを決めたが、多くの被害者は同じ症状に苦しみながらも認定されていないというだけで調査対象外であった。カネミ油症研究班によって設定され、その後、ダイオキシン類の血中濃度が追加された現行の認定基準は、未解明なまま作られたものであり、根本的に見直すべきである。
事件から40年以上経った今もなお、被害者は治療法のない種々の症状や全身にわたる病気で苦しめられている。汚染油を直接食した第一世代は高齢化が進み、苦悩の中で亡くなる方も急増している。また、被害は二世、三世にも顕れており、早急な救済策を講じることが不可欠の課題である。
本会は、11月22、23の両日、医師・歯科医師ら32人が長崎県五島市を視察して26人の患者・被害者と交流し、聞き取りや簡易歯科検診を実施した。いのちと健康を守る医師・歯科医師の団体として、カネミ油症問題をあらためて認識し、国が、事件発生後も被害回復のために必要な措置を講じてこなかった経過等に鑑み、未認定患者(二世、三世を含む)を含む全被害者の健康調査や被害者に対する医療費の公費負担、健康管理手当の支給など、国が主体となった下記事項の実現を強く求めるものである。

一.汚染カネミ油による全被害者を対象にした健康調査を実施すること。

一.カネミ油症の検診・研究事業を抜本的に見直し、油症の解明及び根治療法開発を強化すること。

一.医療費自己負担分の公費負担、健康管理手当の支給などによる医療・生活支援措置を講じること。

一.認定基準を抜本的に見直し、未認定被害者を救済すること