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「2010年度税制改正大綱」について

2009年12月24日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

12月22日、鳩山内閣は2010年度「税制改正大綱」を閣議決定しました。
友愛社会を掲げた政権の理念とは逆に、全体として、国民への増税を強める一方で、大企業・大資産家を優遇する「改正」方向が最大の特徴といわざるをえません。

1、子ども手当や高校授業料無償化は重要ですが、その財源として、所得税・住民税の扶養控除の廃止・縮小を行うとしています。しかし、このままでは保育料や国保料(税)など約20項目以上で負担が雪だるま式に増える可能性が懸念されます。また、今回は廃止・縮小を見送った成年の扶養控除や配偶者控除を今後、見直すとしています。子ども手当の対象にならない庶民には増税の負担のみが強いられる形となります。

2、社会保険診療報酬にかかわる事業税の非課税措置は、2010年度は存続となりましたが、2010年度かけて真摯に議論し結論を得る形となりました。
社会保険診療報酬に対する事業税の非課税措置は、@国民の健康と命を守り、A社会保険診療報酬は公に定められており、国民皆保険制度と不可分の関係にあり、B学校健診・救急医療など地方自治体のサービスに主体的に携わっており、C医療の営利性は禁じられている、D応召義務があり、正当な理由なく治療を拒否することはできない、等々きわめて高い公共性からいっても、非課税には合理性があります。「医療崩壊」を建て直すためには、地域医療を支える医療機関全体の底上げが必要であり、地域医療を守り充実した医療をおこなっていくためにも、医療の公共性・公益性を保障する上で、本措置は税制のかなめであると考えます。
2011年度以降も租税特別措置法第26条と合わせて、社会保険診療報酬に対する事業税非課税措置を存続させるとともに、地域の医療機関の役割が発揮できる診療報酬体系の構築とあわせて、社会保険診療を支える合理的な医業税制の確立を求めます。

3、減税の恩恵が大企業に集中している研究開発減税、上場株式等の譲渡益・配当に対する10%軽減税率課税は、そのまま存続・延長されました。
この間の法人税の相次ぐ引き下げ、研究開発減税、欠損金の繰越期間の延長、海外子会社からの配当益金不算入などによって、大企業の税負担は実際の税率より低くなっています。大資産家も所得税・相続税の最高税率引き下げなどで恩恵を被り、証券優遇税制では2007年度だけで100億円以上の所得のあった株長者に1人平均35億円も減税になっていることが明らかになっています。
この間の大企業・大資産家への優遇措置を是正し、憲法がさだめる応能負担原則にもとづく税制の確立に向けた転換を図るべきです。

4、消費税については、先の衆議院選挙での選挙公約どおり、「政権担当期間中、…税率引き上げは行わない」としていますが、「今後、社会保障制度の抜本改革などとあわせて」検討としています。自公政権が09年の通常国会において、2011年度までに消費税増税法案を成立させるとした所得税法付則第104条を可決させたこととあわせて、社会保障財源を前面に押し出して、将来の増税に向けて議論をすすめる姿勢を明らかにしたものといえます。また社会保険診療報酬等に係る消費税のあり方、いわゆる損税問題についてはその検討事項にすら上がっていません。
しかし、そもそも消費税は所得の高い人ほど負担が軽く、逆に所得の低い人ほど負担が重くなる、最悪の逆進的な税制です。このような税制は、応能負担原則、再配分の効果などから見て社会保障税制にふさわしくありません。
私たちは、国民のくらしや家計を守り、患者負担を軽減し、消費税による医療機関の「損税」を解消するため、消費税減税、医療をはじめ、日常生活品へのゼロ税率の適用などをただちにおこなうよう強く要望するものです。また、所得税法付則第104条をただちに廃止すべきだと考えます。

5、「大綱」では、「納税者権利憲章(仮称)の制定」の項目を設け、「国民主権にふさわしい税制を構築していくために、納税者の税制上の権利を明確にし、税制への信頼確保に資するものとして納税者権利憲章(仮称)を早急に制定します」としています。
各地での会員への税務アンケートからも明らかなように、依然として納税者の権利を軽視した税務調査が存在している中、国税通則法一部改正・納税者権利憲章の制定をただちに行うよう強く求めます。さらに「納税者の利便」「社会保障給付のため」を前面にした社会保障・税の共通番号制の導入も検討されていますが、もし導入されれば医療・社会保障費の削減や、国民総背番号制など国民の管理・統制、課税の強化につながる可能性があるため反対します。
私たちは、全国の医師・歯科医師の団体として、一貫して応能負担原則である直接税中心の総合・累進課税、生活費非課税などの民主的税制の確立を求めてきました。その立場から、私たちは、国民に開かれた税制論議に基づいて、大企業・大資産家に応分の負担を求め、国民には減税を行うよう、「2010年度税制改正大綱」の見直しを求めます。