2010年診療報酬改定に関する中医協検討内容に対する要望書
2009年12月28日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇
1 初・再診料
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診療所の初・再診料の引き下げは絶対に行わないでください。
12月16日の基本問題小委員会では、病院・診療所の再診料の統一化を目指す方向で一致されました。保団連は、病院・診療所の再診料の統一をかねてから要求しており、統一の実現を求めるものです。
ところが、12月22日の中医協総会に提出された「平成22年度診療報酬改定に関する1号側(支払側)の意見」の中で「基本診療料については、同一サービスは同一の報酬との観点から、病診格差がある再診料は、診療所を引き下げ、病院を引き上げる形で統一を図るべきである」と記述され、12月23日の藤井財務大臣と長妻厚生労働大臣の懇談では、財源確保のために診療所の再診料を引き下げる方向が示されました。
しかし、この間の診療報酬の抑制によって開業医、勤務医ともに経営も労働条件も厳しい状況におかれています。こうした中で診療所の再診料引き下げが実施されれば、地域医療がさらに疲弊し、取り返しのつかない事態を招いてしまうことになってしまいます。
統一のために診療所の再診料の引き下げや、処置や検査を初・再診料に包括するようなことがあってはなりません。
「医療崩壊」を食い止めるためには、地域医療を支える開業医、中小病院を含めた全ての医療機関の診療報酬の底上げを行うことが重要です。
こうしたことから保団連では、医科・歯科、病院・診療所を問わず、診察の費用として初診時3,000円、再診時1,000円の実現を2010年改定にあたって要求していますが、少なくとも、診療所の初・再診料を引き下げたり、初・再診料への包括の拡大は絶対におこなわないでください。
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診療科別の初・再診料は導入しないでください。
診療科別の初・再診料等の設定については、現実的ではないとの意見が大勢を占めておりますが、保団連も同意見です。
行政刷新会議の事業仕分けでは、「収入が高い診療科の報酬見直し」を求めていますが、今回収支差が高いと指摘されている整形外科は2008年改定で大きな変化がなかったにも関わらず前回比で極端に収支差が高くなっています。
収入には自由診療や介護収入も含まれており、サンプルが数十医療機関程度しかない医療経済実態調査各科別データを元に報酬見直しを実施すれば、大変なミスリードをしてしまいます。
診療科別の初・再診料の導入等はしないでください。
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外来管理加算の時間要件や診療録への記載要件を撤廃してください。
外来管理加算の時間要件について民主党医療政策詳細版では、「外来管理に時間要件はなじまないことをふまえ、診療所負担の軽減を図るために撤廃する」と明記されており、12月16日の中医協でも5分ルールについては廃止の方向となりました。
ところが、基本問題小委員会では、外来管理加算の5分ルールの撤廃を前提としつつも、懇切丁寧な説明などをどう担保するかという意見が出されています。
そもそも外来管理加算は、処置等を実施することがないため外科系医療機関に比べて診療報酬上の評価が低かった内科系医療機関の再診料を補填する目的でつくられた「内科再診料」がもとです。その後、名称が「外来管理加算」に変更されましたが、診療報酬抑制政策のもとで、内科系医療機関の報酬を補填する意味合いは薄れ、実際には再診料を低く抑えるために利用され、「外来管理加算」がなければ、開業医や中小病院の経営を支えることはできない状況におかれています。
2008年改定では、@問診と身体診察を行い、患者に症状や療養上の注意点を説明し、要点を診療録に記載する、A概ね5分を超えて直接診察を行い、診療録に時間要件に該当する旨を記載することが算定要件に追加されましたが、これらを外来管理加算の算定要件にすることは、外来管理加算を医療費抑制に利用してきた行為を覆い隠すものです。
しかも、産科や小児科、病院勤務医対策が2008年改定の目玉であったにもかかわらず、外来管理加算への時間要件等の導入によって、小児科や200床未満の病院も大きな影響を受けています。
外来管理加算への時間要件導入や診療録への記載などを無条件で撤廃し、改定前の要件に戻すべきです。
なお、外来管理加算の時間要件導入による影響は年間1200億円との調査結果が発表されました。厚労省は外来管理加算の時間要件導入による影響を240億円と推計して改定を実施しており、推計値と実値との間には年間で960億円もの差があります。
次回改定にあたって、外来管理加算の時間要件廃止による財政影響は240億円で計算するとともに、計算誤りによる乖離分(年間で960億円)については、予定している改定率と別に外来の引き上げ財源にあてるべきです。
2 勤務医の負担軽減
(1) 医師の報酬上の評価を明確にするとともに、看護師をはじめとした医療関係職種や事務職員等の業務を診療報酬上きちんと評価してください。
11月4日の基本問題小委員会では、事務局から「医師が担っている業務のうち、看護師らで対応可能な業務」や「事務職員等が担うことが可能であるにも関わらず看護師等が担っている業務」が示され、チーム医療への評価に対する議論を進めるよう提案されました。
これらにより医師及び医療従事者の負担軽減を進めることは必要ですが、医療事故等につながらないようにすることが必要です。
なお、問題は、医師だけでなく、看護職員をはじめとした医療関係職種や事務職員等の業務が診療報酬上きちんと評価されていないことにあります。
保団連は、@入院基本料について医学管理料、看護料、入院環境料を包括する方式ではなく、それぞれに対する評価を区分し、大幅に引き上げる、A入院環境料については、室料及び光熱水費だけでなく、医療法で定める医療安全管理を実施するに必要な費用や療養環境の費用を保障する、B入院基本料の算定要件とされている夜間勤務等看護体制、入院診療計画、院内感染防止対策、医療安全対策、褥瘡対策について加算評価とする、C15:1入院基本料や特別入院基本料、有床診療所入院基本料、有床診療所療養病床入院基本料については、看護職員の人件費すら評価されておらず、大幅に引き上げを行うよう求めます。
(2) 「医師事務作業補助体制加算」「入院時医学管理加算」の要件・報酬を見直してください。
10月30日の基本問題小委員会で「医師事務作業補助体制加算」が論点とされ、病院団体からは医師事務作業補助体制加算の対象を全ての病院に広げることや算定要件の緩和を求める意見が出されています。
保団連でも2010年診療報酬改定に関する要求で、「医師事務作業補助体制加算は、全ての救急医療機関に対象を拡大するとともに、要件を病床対医師事務作業補助者比のみとし、医師事務作業者の人件費を保障できる報酬に引き上げること」との要望を掲げており、実現いただけますよう、お願いします。
また、11月27日の基本問題小委員会では、入院時医学管理加算について、「地方の病院では要件を満たすことが困難」であったことが論議されました。
入院時医学管理加算の施設基準から、「病院の初診に係る選定療養の届出を行っており、実費を徴収していること」との要件を削除するとともに、要件を緩和した入院時医学管理加算2を新設するよう、求めます。
(3)選定療養の拡大ではなく、受診方法の協力に対する周知徹底を行ってください。
11月27日の基本問題小委員会では、@複数の家族が説明を求めた場合、A患者の都合で時間外に病状説明した場合、B軽症患者が個人的な事情で時間外に救急病院を受診した場合は、選定療養の対象にしてはどうかとの論点が示されました。
しかし、同委員会で勝村委員から「低所得者などが仕事をないがしろにできない」との反論がありましたように、これらを選定療養にすることは問題があります。また、「保険外負担を払っているのだから便宜を図るべき」との風潮を助長しかねません。
むしろこうした受診方法をさけるような労働・社会環境の改善や、患者・国民・企業への協力のお願いなどに力を注ぐべきであり、選定療養の拡大等を行うべきではありません。
3 入院料について
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7:1、10:1入院基本料に、看護補助加算を新設してください。
12月2日の基本問題小委員会では、7:1入院基本料や10:1入院基本料に看護補助加算を新設すべきとの意見が大勢を占めましたが、7:1や10:1の看護補助者は介護福祉士等の有資格者に限るべきとの意見と、有資格者を要件にすることには反対との意見が出されました。
保団連では、7:1入院基本料や10:1入院基本料においても看護補助加算を評価すべきと考えます。しかし、病院における看護補助者の業務は、医師や看護師の指示の下で実施される看護補助業務です。また、現時点で介護福祉士等の有資格者を要件にすれば、介護保険施設等との間で職員の奪い合いとなりかねません。したがって、有資格者要件を入れないで看護補助加算を新設するよう求めます。
(2) 後期高齢者特定入院基本料と180日超入院の保険給付外しを廃止してください。
後期高齢者特定入院基本料については、12月16日の基本問題小委員会で一般にも拡大するとともに2012年改定に向けて医療区分の導入が検討される方向になりました。
しかし、そもそも後期高齢者特定入院基本料については、長妻厚労大臣自身が、10月23日のTBS番組で患者の“追い出し”につながる懸念があるとして見直す考えを示していました。長妻大臣は、11月2日の国会答弁でも、「例えば入院を長くすると診療報酬が下がって病院から出されるようなそういう制度もございましたけれども、そういうものについても来年度から中医協と相談して廃止していく方針をもっています」と明言されております。
後期高齢者特定入院基本料は様々な除外規定を設けてはいますが、除外規定では必要な入院医療を継続することができず、老人の追い出しにつながっています。これを一般患者に拡大することは必要な医療の提供をさらに阻害することになります。一般患者への拡大をやめ、後期高齢者特定入院基本料そのものを廃止すべきです。
なお、2012年改定に向けて一般病棟において90日を超える入院患者への医療区分の導入が検討されるようですが、中小病院の一般病棟の多くは、その医療機関が持つ医療機能を最大限発揮するために、急性期から慢性期までの病床を、それぞれの医療機関の実態にあわせて運営しています。このことが、その地域の実態にあった医療提供体制をつくりあげており、入院日数を前提に医療区分を導入するようなやり方を入れるべきではありません。また、保団連は、療養病床については「必要な医療が提供できるよう、医療区分を廃止し、診療報酬を引き上げること。」との要望を行っています。
さらに、180日超入院患者の保険給付外しについても、入院の必要性ではなく入院日数によって保険給付の一部が外され患者負担にされるのは、正当性がありません。入院が必要な患者が退院を余儀なくされる事態が発生しており、これについても廃止すべきです。
(3) 入院基本料の届出区分は、同一種別の病棟単位で傾斜配分ができる現行の取扱いに加え、病棟単位での届出を認めてください。
12月2日の基本問題小委員会では、入院基本料の届出区分や夜勤従事者の取扱いが論議されました。
入院基本料は入院患者対看護職員比率で区分されていますので、同一種別の病棟間で傾斜配分した場合に病棟単位で報酬を切り分けなければ患者から見れば不合理です。
ただし、病棟単位の届出だけにすると日常管理を行う上で不都合が発生します。同一種別の病棟間で傾斜配分をする場合は、その旨を院内掲示することとなっており、患者への了解はこれによって可能です。
こうしたことから、同一種別の病棟間は傾斜配分ができる現行の取扱いに加えて、病棟単位での届出についても認めるべきです。
(4) 療養病床の医療区分による報酬体系を廃止してください。少なくとも、医療区分1の報酬を引き上げ、高額な薬剤や検査を出来高請求できるようにしてください。
7月8日の慢性期入院医療包括評価調査分科会で療養病床のコスト調査結果が報告され、医療区分1の場合は、ADL1の場合で1人1192円(1日につき)の赤字、ADL区分2で1人3459円(1日につき)の赤字、ADL区分3で1人3217円(1日につき)の赤字であることが判明しました。
同様の調査結果が出た前回改定では、医療区分1の報酬は据え置かれ医療区分2・3は大幅に引き下げられた結果、医療区分2・3の患者の黒字幅が減少し、医療区分2・3の収入で医療区分1の患者を入院させることも困難になっています。
保団連では医療区分の廃止と報酬引き上げを求めていますが、少なくとも、調査結果を受けて医療区分1の報酬を引き上げるとともに、認知症薬をはじめとした高額な薬剤や検査等が出来高で算定できるようにし、療養病床に入院中の気管切開患者の気管内チューブの材料料算定を認めるべきです。
また、医療療養病床における医療サービスの質検証の精度を上げるために、「治療・ケアの内容の評価表」の項目を追加拡充した上で「医療区分・ADL区分に係る評価票」に評価項目を移し替え、レセプトへの添付を義務づける方向で見直す提案が行われていますが、こうした記載が医療現場に大きな負担増となり、患者への医療サービスの低下につながってはなりません。したがって、これらの記載を簡素化すべきです。
なお、療養病床への質評価として、成功報酬的な要素が検討されていますが、個々の患者の状態増を不公平なく評価することは困難であり、患者の選別に繋がりかねず行うべきではありません。また、患者への医療サービスの低下につながらないよう、提出の評価や要件化も慎重にする必要があります。
(5) 亜急性期入院医療は、病床数割合の緩和及び療養病床への拡大を行ってください。
12月2日の基本問題小委員会では、亜急性期入院医療管理料2の算定要件について、治療開始から3週間以内の患者数が3分の2以上であることについて緩和を求める声が出され、名称も含めて役割を整理するなど、要件を見直す方向になっています。
急性期を脱して慢性期に移行する患者を入院させる病床の評価を行うべきですが、病床数割合がネックとなって届出ができないなど、病棟運営が困難なケースがあります。こうしたことから、@亜急性期入院医療については、一般病床に占める当該病床数割合を5割まで拡大する、A療養病床においても人員等の条件をクリアした場合には届け出を可能とする、などを実施すべきと考えます。
(6) 有床診療所の入院基本料の引き上げと加算評価の新設を行ってください。
「平成20年度慢性期入院医療の包括評価に関する調査」について8月27日の慢性期分科会では事務局より「退院時点で入院時点よりも医療区分1の割合が高まる傾向にあることを踏まえると、診療所の医療療養病床が地域住民にとって身近な入院施設として機能していることを示唆すると考えられる」との報告がされています。
また、11月20日の基本問題小委員会では、有床診療所入院基本料の評価が低すぎることが指摘されました。
有床診療所は地域医療になくてはならない入院施設ですが、長期にわたる医療費抑制政策の中で、地域から姿を消しつつあります。
療養病床廃止・削減計画が決まった2006年2月末と2009年6月末を比べても、施設数で17%に当たる2441施設が減少、病床数で14.5%に当たる24605床が減少しています。これは、重要な資源の損失であり、地域から有床診療所がなくなれば病院の負担がさらに増すことになります。
地域における入院機能を評価するため、有床診療所入院料を大幅に引き上げてください。
有床診療所数推移 |
|
2006年2月末 |
2009年6月末 |
差 |
施設数 |
有床診 |
13,783 |
11,342 |
-2,441 |
療養病床を有する診療所(再掲) |
2,448 |
1,652 |
-796 |
病床数 |
一般病床 |
145,179 |
127,506 |
-17,673 |
療養病床 |
23,768 |
16,836 |
-6,932 |
一般+療養 |
168,947 |
144,342 |
-24,605 |
4 医療連携・入院中患者における他医療機関からの診療・指導について
(1)入院患者の他科受診等の取扱い
12月18日の基本問題小委員会に厚生労働省から、DPCを含めて入院中の患者が他院を受診した場合は入院医療機関が保険請求を行い、費用は入院医療機関と他院に合議によってはどうかとの案が出されました。
しかし、これでは、@他院で行う検査や治療が特定入院料等やDPCの包括範囲を超えるケースに対応できない、A税金の取扱いをどうするのか、などいくつかの問題が想定されます。
DPC算定病棟を含めて多くの入院医療機関において、入院患者のすべての疾患の治療を行うことは不可能です。入院中の患者であっても当該入院医療機関にない診療科や当該入院医療機関では実施できない検査や治療のために他院を受診し、投薬を含めた治療を受けることが患者にとっては必要です。
患者の治療を確保するために、入院中の患者が当該入院医療機関にない診療科や当該入院医療機関では実施できない検査や治療のために他院を受診し、投薬を含めた当該診療にかかる費用を他院において保険請求できるようにしてください。
(2)「救急急性期受託加算」、「在宅急性期受託加算」を新設してください。
11月13日の基本問題小委員会では、急性期医療機関を中心に、患者がスムーズに適切な療養に移行するための取組みなどが論点として示されました。
そもそも、平均在院日数要件やDPCなどの支払い制度のもとで、急性期医療機関において医学的に必要な入院日数の間、入院させることが困難となってきています。こうしたことが発生しないようにすることを前提とした上で、亜急性期や療養期における入院医療を行う医療機関・病棟との連携を評価すべきです。
こうした観点から保団連では、@「救急急性期受託加算」(救急病院からの新規入院)、A「在宅急性期受託加算」(在宅や介護保険施設等で療養中の患者が急変した場合の入院)を一般病棟・療養病棟の入院基本料等加算として新設するよう、求めています。
5 リハビリテーション
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疾患別体系を廃止し、実施するリハビリテーションの内容による体系に戻すとともに、より広範な医療機関でリハビリテーションが実施できるようにしてください。
11月18日の基本問題小委員会では、@疾患別リハを廃止して、総合リハビリテーションとしてはどうか、A廃用症候群へ対応できるようにきっちり手当てすべき、B心大血管リハはハードルが高く、緩和すべき、C維持期リハの13単位は継続する必要がある、などの意見が出されました。
問題の根源は、理学療法学、作業療法学、言語聴覚療法学に基づかない「疾患別リハビリテーション体系」と「算定日数上限(標準的算定日数)」であり、医療で提供すべきリハビリを介護保険に移行させようとしたことにあります。
リハビリは医療です。保団連は、リハビリテーションについて下記の改善を求めます。
@ 疾患別体系を廃止し、理学療法・作業療法・言語聴覚療法等、実施するリハビリテーションの内容による体系に戻すこと。施設面積基準を緩和し、小規模診療所でも届け出できるようにすること。従事者についても、当該リハビリテーション実施時間に従事すればよいこととすること。
A リハビリテーション料の日数による算定制限を廃止し、個々の患者の必要性に応じてリハビリ医療が提供できるようにし、維持期リハビリについても算定制限をせず、医療保険で給付すること。
B 要介護被保険者等である患者に対して、「介護保険におけるリハビリテーション」に移行した日以降は、医療保険における疾患別リハビリテーション料は算定できない、とする給付調整通知を廃止し、並行給付を認めること。
C 除外対象患者に対する疾患別リハビリテーションを継続する際に、「改善の見込み」を明細書に記載することを求めているが、こうした記載をやめること。
D 集団療法を評価する点数を新設(復活)すること。
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必要に応じて医療保険のリハビリテーションと介護保険の通所介護等との併施ができるようにすること。
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心大血管リハビリテーション料に関わる施設基準については、次の通り改善すること。
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常勤理学療法士及び常勤看護師の専従要件を緩和し、専任とすること。
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心大血管リハビリテーション実施時間以外の時間は、専従する理学療法士が他のリハビリに従事できるようにすること。
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医師のほかに、理学療法士又は看護師合わせて2名以上の場合に、「医師の直接監視下で臨床検査技師もリハを担当できる」ようにすること。
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機能訓練室については、専用施設要件を緩和し、「スペースとして確保できればよい」とすること。
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施設基準(T)の医師要件について、「循環器又は心臓血管外科の医師が常時勤務」とあるのは「循環器又は心臓血管外科の医師が実際に当該リハビリテーションを実施している時間について、常時勤務」とすること。
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回復期リハビリテーションの成果方式を廃止してください。休日リハビリ実施加算を新設してください。
11月18日の基本問題小委員会では、回復期リハビリテーション病棟入院料の質の評価や提供体制の担保が論点として示され、日曜日のリハ実施は困難であり単価を上げるべきとの意見が出されました。
回復期における休日のリハ実施の評価は重要であり、休日加算等の新設を求めます。
しかし、前回改定で導入した成果方式は、障害別、療法別で、評価方法は様々であり、改善度合いを不公平なく評価することは極めて困難です。特に、言語聴覚療法が主たるリハビリとして入院している患者の改善に関する評価は困難です。
成果方式は、「評価」の目的を歪め、患者の選別につながりかねないことから廃止し、疾患別リハビリテーションの算定対象患者のすべてを回復期リハビリテーションの算定患者とすべきです。
6 認知症の治療
○ 認知症そのものの治療への評価を行うとともに、認知症患者に対する身体的疾患の治療にかかる手間についても評価を行ってください。
認知症の治療については11月6日の基本問題小委員会に、@退院可能な患者に対する介護保険との連携、相談支援体制の整備、A精神療養病棟の評価、B外来医療について専門医療機関とかかりつけ医の連携などが論点として示されました。
認知症については、まず、「脳卒中の後遺症患者」及び「認知症患者」の入院制限を撤廃することが必要です。
また、認知症そのものの治療を評価することは当然必要ですが、同時に、認知症患者の身体的疾患の治療に対する評価も一方で必要です。
このため保団連は、@初・再診料への認知症患者加算の新設、A訪問看護の「末期の悪性腫瘍その他厚生労働大臣が定める疾病等の患者」に「認知症その他特に頻回の訪問看護を要する患者」を加える、B認知症患者在宅療養指導管理料の新設(復活)、C入院基本料等加算への高度認知症患者加算の新設等の実施を要求しています。
7 医療安全に関する体制について
○ 医療安全管理を実施するに必要な費用を保障する「外来医療安全管理加算」を新設し、すべての医療機関ですべての患者に算定できるようにしてください。
11月18日の基本問題小委員会に、医療安全に関する体制について、@より手厚い院内感染対策、A専従の医薬品安全管理責任者の配置等の評価が論点として示されました。
討議では、医療安全対策加算について、要件を緩和するか点数を大きく引き上げて医療機関全体で安全対策、感染症対策を取れるようにすべきだとの意見が出されました。
こうした手厚い対策について評価することも必要です。同時に、全ての医療機関で医療安全管理を進める必要があります。
そのためには、医療法で定める医療安全管理を実施するために必要な費用の保障を明示的に行うべきであり、医療法で定める医療安全管理を実施するに必要な外来療養環境の費用(待合室の確保や院内感染防止のための諸費用等)を保障する「外来医療安全管理加算」を新設し、すべての医療機関ですべての患者に算定できるようにすべきです。
8 医療技術の評価について
○ 安全性や有効性が確認された新医療技術については、速やかに保険導入してください。
11月18日基本問題小委員会に医療技術の評価に関わる提案件数が731件あり、そのうち2次評価で検討することが適当とされたのは344件(新規159、既存185件)であったことが報告され、今後は、二次評価結果をまとめた上で来年1月下旬頃には基小に再度報告される予定となっています。
検討にあたって、安全性や有効性が確認された新医療技術については、速やかに保険導入を行い、医学・医術の進歩を全ての国民が受けられるようにしてください。
9 明細書発行について
11月27日の基本問題小委員会で、希望者に対する発行が一部義務化された「計算の基礎となった項目ごとに記載した(領収)明細書」の発行の有り方が論議され、勝村委員からは、原則義務化と無料化を進めるべきとの主張が出されました。
しかし、医療機関は、「医療」の内容について患者さんに説明する義務がありますが、政府が決めた複雑で説明が困難な「医療費」の内容・仕組みを説明する義務はないと考えます。また、医療機関が「個別の費用ごとに区分して記載」した領収証を患者に渡すことによって、その患者さんが自分の治療を理解し、患者さんと医師との信頼関係が深まることにはなりえないと考えます。
こうしたことから、計算の基礎となった項目ごとに記載した領収明細書の交付を義務付けることには反対であり、現在義務化されている「個別の費用ごとに区分して記載した領収証」の交付義務についても撤回すべきです。
10 後発医薬品の使用促進のための環境整備について
○ 処方せん様式の変更をやめ、2006年の改定前の方式に戻してください。後発医薬品の銘柄指定の処方せんを受け付けた薬剤師が、処方医に疑義照会せず別銘柄の処方を行えるようにすることは、やめてください。
12月22日の総会で了承された「後発医薬品の使用促進のための環境整備の骨子」では、@「後発医薬品への変更不可」欄に署名等のない処方せんを受け付けた薬局において、変更調剤後の薬剤料が変更前と同額又はそれ以下であり、かつ、患者に説明し同意を得ることを条件に処方医に改めて確認することなく、処方せんに記載された先発医薬品又は後発医薬品と含量規格が異なる後発医薬品の調剤を認めること、A処方せんに記載された先発医薬品又は後発医薬品と類似した別剤形の後発医薬品の調剤を認めること、B薬剤料を包括外で算定している入院患者に対する後発医薬品の使用促進に対する診療報酬の評価、C療養担当規則等において、保険医は、後発医薬品の使用を考慮するとともに、患者に後発医薬品を選択する機会を提供すること等患者が後発医薬品を選択しやすくするための対応に努めなければならない旨を規定するとされています。
そもそも後発医薬品は、@主成分についても粗悪品の報告例があるなど一律ではなく、基剤やコーティング剤などの生物活性は無視できない、A医薬品認定試験の仕組みが先発と異なる、B適応病名(適応症)が異なる場合がある、C医学品情報が質・量とも少ない、D剤型に違いがあるなど、様々な問題があります。
厚生労働省の「先発品と後発品は同等だ」との説明は誤りです。医師は、処方にあたっては、剤型を含めて効能・効果を考慮して処方しています。医師の処方に基づかない後発品への変更は、患者に大きな影響を与えるおそれがあります。
こうしたことから、処方せんを2006年の改定前の様式に戻すとともに、後発医薬品の銘柄指定の処方せんを受け付けた薬剤師が、処方医に疑義照会せず別銘柄の処方を行えるようにすることをやめてください。また、療養担当規則の変更は、患者の病態等を勘案した上で最適な処方を行おうとする医師の裁量権を奪うものであり、絶対に認められません。
なお、11月20日の討議でも「政府は後発薬を先発薬と品質、有効性、安全性で差異なしと説明しているが、その分析調査は信頼できるのか」との指摘がありましたが、後発医薬品の最大の問題は、薬剤に対する信頼度であり、医療機関からの問い合わせに応える体制が非常に弱いメーカー等が存在する事実があります。
薬は、副反応を及ぼす可能性があり、こうした不安を払拭できる体制づくりこそ、患者にも医療機関にもメーカーにとっても必要な対策と考えます。
11 薬価引き下げ
○ “後発品のある先発品の薬価”に関する薬剤の納入価格の引き下げを行うこと。
12月2日の中医協薬価専門部会に、平成22年度薬価改定の見込みが提出されました。これによると、後発品のある先発品の薬価は、市場実勢価格に基づく薬価引き下げ+▲2%にするとなっています。
納入価格を市場価格のみに任せていれば、後発品のある先発品については事実上2%のR幅がなくなることを意味します。
2%のR幅は保管損耗等の費用のためにどうしても必要であり、これが確保されなければ、医療上の必要から後発品のある先発品を使用する医療機関の経営は圧迫されてしまいます。後発品のある先発医薬品の薬価を引き下げることは当然ですが、薬価引き下げと同時に納入価格を引き下げるよう、厚生労働省としてなんらかの手立てを講じてください。
12 周産期・小児医療
NICUやNICUから他の病床や在宅への移行などに対する評価や、産科合併症以外の合併症を有する妊婦の受け入れ、連携など周産期医療体制の確保や、救急医療機関への支援・評価が検討されていますが、これらの評価を進めてください。また、小児入院医療管理料や小児の初期救急に対する評価も進めてください。
同時に評価の不十分な、外来の小児科医療の引き上げが必要です。このため、@小児科外来診療料の点数を引き上げるとともに、診療情報提供料や高額な「検査、処置、投薬、注射」の費用は、別途算定ができるようにする、A乳幼児加算を大幅に引き上げる、B乳幼児育児栄養指導料の算定対象を6歳未満児まで拡大することなどを実施してください。
13 改定率について
医療崩壊を阻止するためには、10%以上の診療報酬引き上げが必要です。
中医協として、改定率に対する意見具申を行うことが論議されましたが、合意を得ませんでした。
しかし、医療崩壊を食い止めるためには、診療報酬の大幅引き上げが絶対に必要です。中医協として診療報酬総枠での大幅引き上げが必要であるとの意見具申をされるよう、あらためてお願いいたします。
14 改定告示・通知について
診療報酬改定の告示は2月に出されますが、通知は3月にならなければ出されないという事態が続いており、改定内容が十分に周知されないまま、4月改定が実施されています。
これは、何よりも患者にとって不利益であり、医療の現場に大混乱をもたらすものです。
こうしたことにならないよう、少なくとも改定実施の1カ月以上前には、関連通知が出されるよう、特段の対応をお願いいたします。
2010年度診療報酬改定に対する医科・歯科基本要求(参考資料)
[U-1] 2010年の診療報酬改定にあたっては、少なくとも10%以上の診療報酬引き上げを行うこと。改定による財源は、国庫負担と企業負担を増やして捻出し、消費税率の引き上げや被保険者の保険料引き上げによらないこと。
要求理由:小泉構造「改革」による診療報酬の引き下げや給付制限の導入で、必要な医療の提供すら阻害されている。2008年改定では、小泉構造「改革」による負の遺産を断ち切り、必要な医療が公的医療保険で提供できる出発点とすることを目的とし、小泉政権下での4回のマイナス改定(2002年▲2.7%、2004年▲1.05%、2006年▲3.16%、2008年▲0.82%)を取り戻し、必要な医療を提供できるようにするため、10%以上の引き上げを行うべきである。
なお、国民医療費は33.1兆円(2006年度)であり、10%の引き上げによって、国民医療費は3.31兆円引きあがることとなるが、これらは消費されてなくなるものではない。
平成20年版厚生労働白書では、医療経済研究機構報告書(2004年度版)に基づいて社会保障分野の経済波及効果(産業連関表による総波及効果)を紹介しているが、これによれば医療は、4.2635で、全産業平均(4.0671)よりも大きく、雇用誘発係数も主要産業56部門中15位と高い。
また、総務省ホームページに掲載されている「経済波及効果分析シート」に診療報酬を10%引き上げたと仮定して3兆3100億円を投入すると、経済波及効果は、約1.68倍の5兆5500億円(直接効果3.31兆円+経済波及2.24兆円)となる。
(総務省統計局ホームページ http://www.stat.go.jp/data/io/system.htm)
国民の命と健康を守る点からも、内需拡大の観点からも、診療報酬の大幅引き上げが求められている。
[U-2] 医師の基礎的技術料を評価し、医科・歯科とも初診料を300点に、再診料を100点に引き上げること。また、認知症患者に対する対応の評価を加算として評価すること。
要求理由:医療崩壊を食い止めるためには、地域医療を支える開業医、中小病院を含めた全ての医療機関の診療報酬を引き上げることが重要である。診察の費用として初診時3,000円、再診時1,000円は、最低限の要求であり、現行点数は基礎的技術料としてはあまりにも低すぎる。
また、認知症患者に対する診察には、他の患者に比べても手間がかかることから、乳幼児加算と同等の評価の加算を新設すべきである。
[U-3] 医科の外来管理加算への時間要件導入等を廃止し、2008年改定前の要件に戻すこと。また、外来管理加算より高い処置等については外来管理加算を算定せず、再診料+処置料等を算定するが、外来管理加算未満の処置の場合は、再診料+外来管理加算を算定する方式に改めること。なお、眼科や耳鼻科検査を実施しても、そのことで外来管理加算が算定できない扱いは廃止すること。
要求理由:外来管理加算は、処置等を実施することがないため外科系医療機関に比べて診療報酬上の評価が低かった内科系医療機関の再診料を補填する目的でつくられた「内科再診料」がもとである。その後、名称が「外来管理加算」に変更されたが、診療報酬抑制政策のもとで、内科系医療機関の報酬を補填する意味合いは薄れ、実際には再診料を低く抑えるために利用され、「外来管理加算」がなければ、開業医や中小病院の経営を支えることはできない状況におかれている。
2008年改定で、@問診と身体診察を行い、患者に症状や療養上の注意点を説明し、要点を診療録に記載する、A概ね5分を超えて直接診察を行い、診療録に時間要件に該当する旨を記載することが算定要件に追加されたが、これらを外来管理加算の算定要件にすることは、外来管理加算を医療費抑制に利用してきた行為を覆い隠すものである。
しかも、産科や小児科、病院勤務医対策が2008年改定の目玉であるにもかかわらず、外来管理加算への時間要件等の導入によって、小児科や200床未満の病院でも大きな影響を受けており、このままでは、地域医療が崩壊してしまう。
早急に外来管理加算への時間要件導入等を廃止し、改定前の要件に戻すべきである。あわせて、処置等を行った場合に算定点数が低くなる不合理についても解消すべきである。
[U-4] 勤務医の厳しい労働環境を改善するために、地域の第一線医療を担う診療所や中小病院がこれまで担ってきた役割を正当に評価し、すべての医療機関の診療報酬を引き上げること。また、勤務医の厳しい労働環境を改善するため、入院点数等の引き上げを行うこと。
要求理由:2008年改定では、勤務医の厳しい労働条件を引き合いに出して開業医や中小病院の診療報酬が大幅に削られた結果、地域医療を支えている開業医や中小病院が厳しい経営におかれた。また、大病院を含めて勤務医対策は全く不十分である。このままでは、地域医療を支えきれなくなることから、次回改定にあたっては、地域医療を支えるすべての医療機関の診療報酬を引き上げるべきである。
[U-5] 必要な医療は、医療保険で最後まで提供することを基本とし、「公的医療保険でまかなう範囲の縮小」を行わないこと。また、医療を介護保険給付にしないこと。
(1) リハビリテーション料の算定制限を廃止し、個々の患者の必要性に応じてリハビリ医療ができるようにし、維持期リハビリについても算定制限を設けず医療保険で給付すること。
(2) 180日超入院の保険給付外しや、一般病床に90日を超えて入院している高齢患者(「特定患者」)の取扱いなど、日数による入院医療の制限をやめ、必要な医療の提供を公的医療保険で保障すること。
(3) 歯科について、治療の一環として行われる歯周病管理について、病状や管理日数期間によって保険給付から外し患者の自費扱いとするような保険給付制限は行なわないこと。
(4) 安全性や有効性が確認された新医療技術を速やかに保険に導入し、保険の適用範囲を拡大すること。
(5) 光熱水費を保険外とした入院時生活療養費を廃止し、保険給付に戻すこと。
(6) 介護保険給付サービスのうち、医療系サービスは医療保険給付に戻すこと。
(7) 必要に応じて医療保険と介護保険の給付が受けられるようにするために、診療報酬の算定方法(厚生労働大臣告示第59号・平成20年3月5日)の第6号の規定を削除し、医療保険と介護保険の給付調整(要介護被保険者等である患者について療養に要する費用の額が算定できる場合〔厚生労働大臣告示第128号・平成20年3月27日〕)を廃止すること。
要求理由:
(1)そもそも維持期を含めてリハビリは、医師が指示するOT・PT・ST等の専門職種による医療行為であり、患者の病態に応じて医療保険から給付されるべきである。また、介護保険のリハビリは、原則として区分支給限度額の枠内で、ケアプランに基づき実施するものであり、必要性があっても、実施できない場合が少なくない。介護保険にリハビリをもっていくことは、患者に必要な医療を提供するという健康保険法の現物給付原則に反するものである。必要なリハビリは医療保険で給付することとし、リハビリの算定日数上限は撤廃すべきである。
(2)財界からは、「保険給付対象や日数等の直接的な制限」、「保険外併用療養費の拡大」など、あらゆる手段を通じて保険給付範囲の制限と患者負担化が求められており、維持期リハビリの算定制限、180日超入院など、治療が必要であるにもかかわらず、医療保険給付が打ち切られる状態となっている。これは、健康保険法に規定された「療養の給付」の概念を根底から覆すものである。
(3)歯科の慢性病である歯周病について、安定期の管理に関して病態や管理期間によって保険給付を制限するような検討が進められているが、患者に必要とされる医療は保険給付として提供すべきである。
(4)安全性や有効性が確認された新医療技術は、国民が速やかに受けられるようにすべきである。
(5)光熱水費は、患者の継続的な治療を行うための場を提供する上で当然必要なものであり、保険外とした入院時生活療養費は廃止し、保険給付に戻すべきである。
(6)・(7)医療は、医療保険によって提供されるべきであり、居宅療養管理指導、訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリ、短期入所療養介護・介護老人保健施設・介護療養型医療施設における医療サービスを医療保険給付に戻すべきである。
[U-6] 療養病床廃止・削減計画をやめ、必要な医療が提供できるよう、医療区分を廃止し、療養病床の診療報酬を引き上げること。
要求理由:医療区分に医学的な根拠はなく、報酬格差を導入することで必要な医療が受けられない事態となっている。療養病床において必要な医療が提供できるようにすべきである。
[U-7] 患者への医療制限、不合理を改善すること。
(1) 高齢者が受けられる医療を制限する後期高齢者診療料や後期高齢者終末期相談支援料等を廃止し、高齢者の診療報酬を一般患者の診療報酬と区分しないこと。
(2) 「脳卒中の後遺症患者」及び「認知症患者」の入院を制限しないこと。
(3) 歯科の医学管理料における文書提供義務化を撤廃すること。診療上の必要性により文書提供を行なった場合は、文書提供料を別途設定すること。
(4) 個別の費用ごとに区分して記載した領収書発行の義務化を撤回すること。
(5) 基本診療料への処置料の包括をやめ、必要に応じて実施した処置が算定できるようにすること。
要求理由:
(1)後期高齢者診療料や後期高齢者終末期相談支援料等は、医療費抑制の観点から、高齢者の医療提供の場を入院医療から居宅に転換し、病院には病床削減を、開業医には労働強化を押し付け、患者から必要な医療を奪うものである。後期高齢者の医療を差別することは、その生命を軽んじることにほかならない。公的医療保険制度を導入していながら診療報酬を年齢によって切り分けている国はない。
(2)脳卒中の後遺症や認知症に起因する場合の方が、医療ニーズが低いという根拠は乏しい。脳卒中の後遺症や認知症を一律に差別的に対象から除外せず、脳卒中の後遺症や認知症であっても重度の肢体不自由、重度の障害、重度の意識障害であれば、従前どおり対象とすること。
(3)歯科の医学管理における文書提供は、毎回の文書作成に追われ歯科医師と患者の対面時間を削ぎ、患者への十分な説明時間にも支障をきたすなど、本来必要とされる歯科診療への専念を困難にしている。
(4)医療機関は、「医療」の内容について患者に説明する義務があるが、政府が決めた複雑で説明が困難な「医療費」の内容・仕組みを患者に説明する義務はない。医療機関が「個別の費用ごとに区分して記載」した領収証を患者に渡すことによって、その患者が自分の治療を理解し、患者と医師との信頼関係が深まることにはなりえない。
(5)実施した処置を正当に評価すべきであり、2008年改定で基本診療料に包括した熱傷処置、皮膚科軟膏処置、湿布処置、眼処置、耳処置、鼻処置を元に戻すこと。
[U-8] 全ての医療従事者の技術と労働、医療安全管理を含めて医療提供にかかる諸費用を診療報酬で正当に評価すること。
要求理由:医療安全管理に配慮し、質の高い保険診療を提供するためにも、全ての医療従事者の技術と労働、医療材料や医療安全管理、保険請求のための費用など、医療提供のコストを正当に評価することが必要である。
[U-9] 医療提供のためにかかる全ての諸費用を正当に評価するよう、いわゆる「出来高払い」を原則とすること。包括する場合は、その積算根拠を示すこと。
要求理由:医療提供にかかる全ての諸費用を正当に評価した点数であることが当然必要であり、そのことが万人に理解できるためには、積算根拠がわかるものでなければならない。
[U-10] 点数項目の算定制限は、全て自院による取扱いとし、他医療機関との併算定を禁止する制限は撤廃すること。
要求理由:併算定禁止によって、患者のフリーアクセスが制限される。また、自院の責任によらない内容についても制限を設けることは医療機関のみならず、患者に対しても不利益が生じる。
[U-11] 病床規模や平均在院日数など、根拠の乏しい指標に基づく点数格差をなくすこと。
要求理由:病床規模によって再診料や指導料等に格差が設けられているが、病床規模とこれらの点数に格差を設けることには、根拠がない。また、平均在院日数を入院基本料の届出の要件とすることは不合理である。
[U-12] 施設基準について
(1) 「施設基準の届出」を要する医療は、人員や施設に規定を設けなければ患者への影響が大きいものに限定すること。また、院内掲示の義務付けは、名称のみとすること。
(2) 医療機能評価、民間保険加入要件、選定療養の実施を施設基準の要件とした取扱いを止めること。
要求理由:患者への影響がない届出は、廃止すべきである。また、「患者が受けられるサービス等がわかる内容」の院内掲示は、医療機関側が患者に伝えたい内容を患者にわかりやすい方法で行うことが望ましい。したがって、届出したサービス内容については、任意とし、届出毎に患者が受けられるサービス等がわかるよう、閲覧可能な状態にした帳票でも可とすべきである。
また、次の内容が施設基準の要件となっているが、これらはいずれも治療を適切に提供できるか否かを判断する基準に用いるべきものではなく、差額徴収の実施を施設基準の要件とするのは、保険制度の根幹を崩すものであり、要件から外すこと。
○医療機能評価(ISO、日本医療機能評価機能) → 緩和ケア診療加算、緩和ケア病棟入院料
○民間保険加入要件 → ハイリスク分娩・妊娠加算
○選定療養の届出・実費徴収 → 入院時医学管理加算
※ 医師事務補助体制加算・ハイリスク分娩加算は、施設基準の要件ではないが、提出が求められる資料に記載項目がある。
[U-13] 介護保険施設等入所者の医療の算定制限を撤廃すること。
要求理由:介護保険施設等入所者に対する医療の制限は、急性増悪などの必要な医療の提供すら阻害してしまう事例もあり、こうした算定制限は、廃止すべきである。
[U-14] 社会保障の原則である公平性、平等性の観点から、診療報酬点数表や1点単価に都道府県格差を導入しないこと。
要求理由:保険財政や医療費適正化計画の数値目標の達成状況により、都道府県別の診療報酬の特例を定めることができるようにしようとしているが、社会保障の原則である公平性、平等性の観点から、これらの導入をすべきではない。
[U-15] ガイドラインや認定医資格を診療報酬の算定要件に入れないこと。
要求理由:ガイドラインは、当該検査や治療を実施する上での学会等における検討の現時点での到達点を示したものであるが、必ずしも全ての患者に当てはまるものではなく、ガイドラインを点数の算定要件とすべきではない。また、認定医・専門医資格を診療報酬の算定要件とすべきではない。
[U-16] 薬価・材料価格にメスを入れ、正当な薬価・材料価格に引き下げること。その際、購入価格が薬価・材料価格を上回らないようにすること。
要求理由:医療費上昇の原因の一つに諸外国に比べ格段に高い薬剤・材料価格があるため、市場流通価格による薬価・材料価格の決定方式を是正し、原価が反映できる方式に改めること。
[U-17] 診療報酬の請求をオンラインによる方法に限定しないこと。また、医師の裁量権を否定し、画一的医療に導く可能性のあるオンラインシステムの導入を凍結し、内容を再検討すること。
要求理由:診療報酬のオンライン請求義務付けは、地域医療の崩壊をもたらすとともに患者さんのプライバシー保護の点からも重大な問題である。また、メーカー利益誘導と社会保障個人管理システム化の恐れがある。オンライン請求に限定せず、紙媒体での請求を今後とも認めるとともに、オンラインシステムそのものについても、再検討すべきである。
[U-18] 検証部会の結果等で通常の改定時期でない時期に、国民に必要な医療を提供するため再改定を行なう場合は、必要な医療を提供するための財源を確保して実施すること。
要求理由:2006年改定では、疾患別リハビリテーションに日数制限が導入され、必要なリハビリテーションが受けられない事態が相次いだ。リハビリテーション日数制限撤廃を求める国民的な運動の中で中医協は、再改定を決定したが、「財政中立」のもとで行なわれたため、逓減制が導入され、この結果、多くの医療機関で再改定前より経営が悪化しており、必要なリハビリテーションの提供が困難になった。国民に必要な医療を提供するための再改定であったはずなのに、再改定の結果は、そうはなっていない。「財政中立」を前提とするのではなく、必要な医療を提供するための財源を確保すべきである。
[U-19] 2010年診療報酬改定にあたっては、中医協公聴会を複数個所で開催するとともに、正式にパブリックコメントを募集し、寄せられた意見に対する考え方を示すこと。
要求理由:2006年改定、2008年改定とも、公聴会は1回のみの開催で、改定意見についても募集期間が短く、かつ寄せられた個々の意見に対する考え方も示されなかった。2010年改定にあたっては、公聴会を複数個所以上で実施するとともに、正式なパブリックコメントとして改定意見の募集期間を1カ月以上設け、寄せられた意見に対する考え方を示すべきである。
[U-20] 診療報酬改定にあたっては、患者や医療機関に負担を押し付けて大混乱を生じることのないよう、官報告示から実施までの周知期間を少なくとも3か月以上設け、少なくとも1カ月以上前には通知を出し、新点数の算定開始日までに不明確な解釈を残さないようにすること。
要求理由:診療報酬改定の告示は2月に出され、通知は3月中旬に出される事態が続いており、改定内容が周知されないまま、4月改定が実施されている。これは、何よりも患者にとって不利益であり、医療の現場に大混乱をもたらすものである。そのしわ寄せは、医療機関と患者に押し付けられている。こうした事態にならないよう、少なくとも1カ月以上前には、関連通知が示されるべきである。