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地域医療を守るため、「外来管理加算の時間要件の無条件撤廃、診療所の再診料の引き下げ・包括化を行わないこと、医療崩壊を食い止めるため、改定率をさらに引き上げること」を求める要望書

2010年1月7日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

 前略 国民医療確保に対するご尽力に敬意を表します。
さて、1月6日付メディファクスでは、足立信也政務官が単独インタビューで、@外来管理加算について、「選択肢の一つは『要らない』ということ。あるいは削減すること」、A「病院の点数を診療所に合わせる判断を中医協がすることはありえない」と述べたと報道されています。
こうした方向で改定が実施されれば、第一線医療を担う診療所や中小病院の経営は悪化し、地域医療がさらに疲弊し、取り返しのつかない事態となりかねません。
私たちは、地域医療を守る立場から、下記の通り@外来管理加算の時間要件の無条件撤廃、A診療所の再診料の引き下げ・包括化を行わないこと、B医療崩壊を食い止めるため、改定率をさらに引き上げることを求めます。

(外来管理加算への時間要件などを無条件で撤廃し、改定前の要件に戻してください。)
2008年改定で導入された外来管理加算の時間要件と診療録記載要件は、開業医と中小病院の医師の負担を増大させるとともに、待ち時間や診療時間の不必要な増大を生み出すなど患者にも影響を与え、経営にも大打撃となっています。
昨年の総選挙にあたって民主党医療政策詳細版に「外来管理に時間要件はなじまないことをふまえ、診療所負担の軽減を図るために撤廃する」と明記されたことは、こうした診療の現場の実態を真摯に受け止めていただいた結果であり、私たちは新政権が公約通り時間要件の撤廃を行っていただけることを、大きな期待を持って、注目しているところです。
そもそも外来管理加算は、処置等を実施することがないため外科系医療機関に比べて診療報酬上の評価が低かった内科系医療機関の再診料を補填する目的でつくられた「内科再診料」がもとです。その後、名称が「外来管理加算」に変更され、診療報酬抑制政策のもとで、実際には再診料と外来管理加算がなければ、第一線医療を担う開業医や中小病院の経営を支えることはできない状況におかれています。
今の状況下で外来管理加算を廃止又は減額すれば、診療所の負担は軽減するどころか、中小病院を含めて大変な負担増となってしまいます。
マニフェストの趣旨に沿って、外来管理加算への時間要件や診療録への記載などを無条件で撤廃し、改定前の要件に戻してください。

(厚生労働省の計算誤りによる外来管理加算過剰削減分を、外来改定率に上乗せしてください)
なお、外来管理加算の時間要件導入による影響は年間1200億円との調査結果が発表されました。厚労省は外来管理加算の時間要件導入による影響を240億円と推計して改定を実施しており、推計値と実値との間には年間で960億円もの差があります。
こうしたことから次回改定にあたって、外来管理加算の時間要件廃止による財政影響は2008年改定で厚生労働省が推計した240億円で計算すべきです。
また、厚生労働省の計算誤りによる過剰削減分(年間で960億円×2年間)は、予定している改定率に加えて外来の引き上げ財源に充てるべきであり、これを病院の再診料・外来診療料引き上げ財源に充てれば、診療所の再診料を引き下げる必要は全くありません。

(医療崩壊を阻止するため、補正予算を含め少なくとも3%以上の引き上げを実施してください)
なお、11月3日に都内で行われた講演で足立信也政務官が「(06年度のマイナス幅である)3.16%を超えるぐらいのアップがないと絶対に無理だ」と述べられましたように、年末に閣議決定した改定率では医療崩壊を食い止められないことは明らかです。
民主党の議員有志で結成された「適切な医療費を考える議員連盟」では、マニフェストを守るために次期改定で3%の診療報酬アップを行うことや漢方薬を保険適用から除外しないことなどを12月4日に小沢幹事長に申し入れたと報道されています。これは、単に公約したから守るという趣旨ではなく、今の医療崩壊の現状をしっかりと認識された上で、患者や国民のために、3%の引き上げを求められたものと推察します。
診療報酬の大幅引き上げについては財源がないとのご意見があります。また、診療報酬を引き上げれば、患者負担拡大や保険料引き上げにつながるとして引き上げに慎重なご意見もあります。
しかし、医療への投資は、決して無駄な消費ではありません。
12月15日に閣議決定した「2010年度政府予算編成の基本方針」においても「医療・介護をはじめとした社会保障分野への投資は、幅広い雇用の受け皿を国民に提供するだけでなく、中期的には高い投資効果が期待できる」とされています。診療報酬を引き上げれば、雇用の拡大と経済波及効果が期待できます。
また、医療崩壊を食い止めることと国民負担増の回避を対立させては日本の医療はよくなりません。
企業負担や国庫負担を引き上げて、診療報酬引き上げが被保険者の保険料の引き上げにつながらない施策を実施することや患者負担の軽減に取り組むことこそが政治の役割であり、社会保険制度の原理・原則にそった対応であると考えます。
医療崩壊を食い止め、雇用を拡大し、経済を活性化させるために、補正予算対応を含め、少なくともネットで3%以上の診療報酬引き上げを行っていただけますよう、強く要望します。