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2010年度診療報酬改定に対する談話(歯科)
運動は着実に反映されたが、わずかな改定率では
歯科医療崩壊は止められない

 
今次改定は、中医協では全体改定率0.19%のプラスとし診療報酬本体では1.55%の引き上げとされた。しかし、その後「後発医薬品のある先発品の追加引き下げ」分の0.16%が全体改定率に含まれておらず、実際の医療費の総枠拡大は0.03%にしかならないことが明らかになっている。
歯科診療報酬本体は2.09%の引き上げとされたが、中医協医療経済実態調査でも損益差額の平均値は前回調査を下回り、歯科医療機関の経営は深刻な状況で、本来歯科医療の危機打開のためには10%以上の引き上げが不可欠である。
ところが答申では、初・再診料、歯周治療の2回目以降、麻酔、有床義歯等の基礎的技術料の引き上げ、歯科技工士雇用の評価新設など本会の要求が反映されたものの、一方で、初・再診料の引き上げのためにスタディモデルの包括や歯科疾患管理料の点数引き下げが断行された。
前回改定と同様、医学的にも根拠のない包括と「縛り」の拡大は、改定財源確保のための安易な手法であり、絶対に許すことはできない。また、歯科疾患管理料という長期管理システムが低廉な点数にもかかわらず強化された結果、患者のための医学管理に、臨床現場の実際とは乖離したあらたな矛盾と困難が持ち込まれた危険性のある改定となっている。
改定内容の詳細な分析と評価は、今後出される告示や通知を踏まえて改めて行うが、現時点での主要な特徴と問題点を以下に指摘する。

1、運動が反映し、長年据え置かれた基礎的技術料が引き上げられた
初診料、再診料、乳幼児の50/100加算年齢の6歳児への引き上げ、病院歯科の施設基準緩和、有床義歯調整管理料の新設、後期高齢者在宅療養口腔機能管理料の廃止と在宅患者の管理料新設、う蝕処置、歯周基本治療の2回目以降、歯周病組織再生誘導手術、麻酔、有床義歯等が引き上げられ、初めて歯科技工士の評価も新設された。
いずれも保団連が要求を掲げ、この間ねばり強く患者・国民と手を携えて運動してきたことが着実に反映されたものであり評価したい。残念ながら限られた改定財源のため、僅かな引き上げにとどまっており、歯科医療の危機打開のために改めて点数の大幅な引き上げを求めたい。

2、有床義歯関連が引き上げられ、初めて歯科技工士の評価が新設された
有床義歯についてはレジン床義歯、バ−や維持装置が、若干ながらも引き上げられた、長年にわたって保団連が主張してきた要求が通ったことは一定の評価ができる。また、義歯の管理において、有床義歯調製管理料として義歯の調整に関わる項目が復活したことは、臨床現場の切実な声によるものである。
歯科技工士を配置し、その技能を活用している歯科医療機関に対する評価として、有床義歯に係る修理の加算が新設された。歯科技工士の雇用と良質な歯科医療提供のための施策として評価はできるが、歯科技工所と定期的な連携を行っている歯科医療機関に対する評価のあり方も今後の課題である。更に義歯修理に限定することなく、すべての歯冠修復・欠損補綴物にまで適用範囲を広げる必要がある。

3、初・再診料は引き上げられたが、医学的根拠もない包括を拡大
初診料が36点引き上げられ218点、再診料が2点引き上げられ42点とされたが、このために、僅かな改定財源の7割近くを投入している。同時にこの引き上げには診療報酬体系の簡素化を名目に、「スタディモデルや歯科疾患管理料のうち、基本的な医療行為を基本診療料に包括」することで財源を捻出している。「基本的な医療行為」が何をさしているのかは現時点では不明だがスタディモデルだけでなく包括が拡大され、前回改定のラバー加算、歯肉息肉除去手術と同様、特掲診療料が初・再診料という基本診療料に包括されることになる。初診料36点、再診料2点という僅かな点数の引き上げのために、一つ一つの治療行為に係る技術と労働の評価をなくす包括は断じて容認できない。強引かつ医学的根拠もない包括拡大の直接の目的は歯科医療費の抑制にあるが、レセプトオンライン請求への地ならしであることも見落としてはならない。

4、歯科疾患管理料による長期管理システム構築の危険性
歯科疾患管理料は、1回目と2回目以降が統合され点数は引き下げられた。算定要件が従来の口腔管理から「継続的な歯科疾患の管理が必要な患者」に変更され、全ての歯科疾患が対象に拡大されている。また、点数の引き下げにもかかわらず、管理計画書に「歯科疾患と全身の健康との関係、継続管理計画には「歯や口の中の改善状況」の記載が追加され、管理計画書作成による診療への影響が危惧される。初診料の算定については主治医の判断によるものでなければならないにもかかわらず、医療機関の責によらない患者の任意中断などの場合でも、「歯や口の中の改善状況」において改善の見られないものについては、初診料の算定ができなくなる恐れがある。過去に廃止された「かかりつけ歯科医初診料」「歯科疾患総合指導料」と同様に、安価な評価で長期間にわたる患者の管理責任を医療機関に課すシステムの強化が図られていることの危険性を指摘したい。

5、在宅では分かりやすい評価体系として時間要件を含めた見直し
歯科訪問診療を分かりやすい評価体系に見直すとして、訪問先を「在宅等」で統一し、患者一人は歯科訪問診療T、複数の患者は歯科訪問診療Uを算定、いずれも20分未満の場合は初・再診料の算定とされた。また、2004年に引き下げられた訪問歯科衛生指導料は今回引き上げられた。治療内容に関わらず20分という一律の時間を訪問診療の算定要件とすることには断固反対する。歯科訪問衛生指導料も20分という算定要件がすでに導入されているが、医療行為の評価を時間で縛るこうした時間要件は廃止し、実際に行われた訪問診療については全てきちんと評価すべきである。また、在宅歯科医療を充実するために医科では認められている緊急時の対応としての往診料の復活をすべきである。
在宅患者の管理では、在宅療養支援歯科診療所と今回「それ以外の診療所」についても行える疾患在宅療養管理料が新設されたことは評価したい。今後、多くの歯科診療所が積極的に在宅歯科医療に関わるためには、少なくとも廃止された老人訪問口腔指導管理料と同程度の引き上げを求めたい。

 以上のように今次改定は、患者・国民と歯科医療担当者の粘り強い運動が着実に反映し評価できる面もあるが、その一方で歯科医療費抑制を意図した包括拡大と長期継続管理システムの強化も含まれた内容になっている。このため、保団連に結集する歯科医師は患者、国民と手を携えて歯科医療の危機突破に向けて「保険で良い歯科医療」運動、混合診療拡大阻止の運動をこれまで以上に進めていく決意である。