厚生労働大臣 長妻 昭 殿
2010年6月14日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇
「生活保護の老齢加算減額・廃止は違法」の福岡高裁判決を認め、
国は「老齢加算」をただちに復活するよう求めます
本日、福岡高等裁判所は、北九州市在住の74歳〜92歳の生活保護受給者39人が、生活保護の老齢加算の削減や廃止は、「憲法が保障する生存権を侵害する」として、市に処分の取り消しを求めた生存権裁判について、「生活保護法に反し違法」との原告勝訴の判決を言い渡しました。
老齢加算の廃止をめぐる生存権裁判は、福岡をはじめ、青森、秋田、新潟、東京、兵庫、京都、広島の8つの地裁に提訴され、これまで福岡を含む4つの地裁と東京高裁で原告の訴えを退ける判決が出されており、原告側勝訴の判決は今回が初めてとなります。
老齢加算は、70歳以上の高齢者は食費や衣服費などが余計に必要だとして、一定額の保護費を加算支給する制度であり、1960年に創設されました。
しかし、国は、社会保障費削減策の一環として、2004年度から老齢加算を段階的に削減し、2006年度からはこれを全廃しました。これによって高齢の生活保護受給者は、毎月の収入が約2割減らされ、「食事や入浴の回数を減らす」「近所付き合いができない」など、「人間らしい生活」が脅かされています。
今、貧困と格差が広がるなかで、生活保護制度が果たす役割はますます重要となっています。にもかかわらず、この間、厚生労働省の調査によって、生活保護での生活水準を下回る低所得の世帯数の推計は、全世帯の14.7%にあたる705万世帯に達し、しかもそのうち実際の生活保護の補足率は15%未満となっていることが明らかとなっています。こうした実態をふまえ、生活保護制度は強化すべきです。
本日言い渡された判決は、廃止に至る経過を詳細に検討した上で、老齢加算の減額、廃止について国の検討は不十分だと指摘し、生活保護法56条に違反し、違法であることを明確に認定しました。
当会は、この判決を高く評価するとともに、被告および国は、本判決を重く受け止め、いたずらに上告はせず、老齢加算制度を元に戻すための措置を速やかにとるよう強く求めるとともに、生活保護制度そのものの抜本的な改善に早急に着手することを求めます。