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厚生労働大臣 長妻 昭  様
中央社会保険医療協議会委員  各位


2010年6月30日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

政府答弁では、必要な医療が提供できない。
直ちに入院中の患者の他医療機関受診にかかる規制の撤回を求める


2010年診療報酬改定によって、入院中の患者が他の専門的な医療機関に受診する際の取扱いに著しい規制が導入され、患者・医療機関の双方に大きな影響が生じています。
こうした中で「入院中の患者の他医療機関受診にかかる規制に関する質問主意書」が小池晃参議院議員(日本共産党)から6月16日に提出され、これに対して6月29日付で政府答弁書(内閣参質174第114号)が出されました。
この間、国会において長妻厚生労働大臣や足立政務官は、小池議員の質問に対して入院料の減額や投薬規制について再検討する旨答弁されており、今回の政府答弁に期待をしていましたが、その期待は大きく裏切られました。

第一の問題点は、包括病床に入院中の患者に対して他医療機関で投薬することが可能だが、その費用を入院医療機関と合議により調整するとした点です。
この扱いは、現物給付を原則とする健康保険法の規定を逸脱するものです。
また、包括病床では投薬の費用が含まれて包括点数が設定されていますが、他医療機関での専門的な投薬の費用を含んで計算されているわけではありません。専門的な薬の他医療機関からの投薬の取扱いは、4月改定前に戻すべきです。

第二の問題点は、「腎臓透析のように一定期間ごとに専門的治療のため他医療機関の受診を必要とする患者については、…さらに困難を抱えかねないと考えるが、政府の見解を明らかにされたい」との質問に何も答えていないことです。
人工腎臓(血液透析)について3月までは、療養病床入院患者と一般病床入院患者とも、入院基本料の減額がされず、他医療機関で初再診料ならびに腎臓透析の費用を他医療機関で保険請求ができていました。ところが、4月からは療養病床入院患者、一般病床入院患者とも入院基本料の基本点数が30%減額されます。人工腎臓は一般的に週3日の受診(処置)を要することから、こうした入院基本料の減額を受ければ、入院医療を継続できなくなってしまいます。

リハビリについては3月まで、一般病床はもとより、療養病棟(床)入院基本料の「包括項目」でなかったため、他医療機関で初・再診料ならびにリハビリの費用を保険請求できていましたが、4月からは、他医療機関ではリハビリ(言語聴覚療法に係る疾患別リハビリを除く)を請求することができません。
これでは、必要な医療を提供することはできません。

第三の問題点は、70%、30%減算の根拠が問われているのに、「70%減算する取扱いが従来からなされていたことの整合性」などの説明に終わっている点です。
今回の改定で70%減算部分についても従来より減算部分は拡大されており、従来の取り扱いとの整合性での説明は意味をなしません。
そもそも療担規則16条では、患者が必要な診療を受けられるよう適切な措置を講じるよう保険医に求めています。転医、対診とあわせて、条件や必要性に応じて他医療機関受診を認めるべきです。また、患者が専門的な診療のため他医療機関を受診する場合に、「他医療機関に対する初診料や再診料の支払いの費用が生じる」ことを問題視するに至っては、まったく常識を疑います。これでは、「療養の給付は適切に行え」と求めるが、しかし「療養に要した費用は払わない」と言っているに他ならない。

なお、今回の答弁書では、「現時点において見直すことは考えていないが、今後、関係者からご意見を伺いながら、必要に応じて見直しの検討を行ってまいりたい。」とされています。入院中の患者の他医療機関受診において、今まさに現場で困難に直面しているのであり、地域の医療提供体制の歪みが拡大しないうちに早急に下記の点を実施されるよう、強く要望するものです。

一 包括病床入院患者さんへの専門的な薬を従来通り他医療機関で投薬し、請求できるようにすること。
この扱いは、現物給付を原則とする健康保険法の規定を逸脱するものであり、合議は両医療機関に大きな負担を課すものです。この点はDPC算定病院入院患者の合議についても同様です。

二 人工腎臓(血液透析)及びリハビリについては、入院料を減額せず、他医療機関で保険請求ができるようにすること。
4月から、透析患者については、入院料が3割も減額され、リハビリについては他医療機関で請求できなくなりました。
これでは、透析患者やリハビリを要する患者の入院が困難となります。直ちに、人工腎臓及びリハビリは、入院料を減額せず他医療機関で保険請求ができるようにしてください。

三 出来高病棟入院患者及び包括範囲を他医療機関で実施しない包括病床入院患者の入院料減額や他医療機関での算定範囲の規制を撤回すること
出来高病棟や、「包括範囲」を他医療機関で実施しない包括病床入院患者については3月までは規定がなく、医学的な必要に応じて他医療機関で専門的な診療を行うことができていました。
出来高病棟入院患者及び包括範囲を他医療機関で実施しない包括病床入院患者の入院料減額や他医療機関での算定範囲の規制を撤回すべきです。