高齢者医療の給付抑制の仕組みを撤廃し、受療権を
保障する制度構築を
2010年7月24日
全国保険医団体連合会
政策部長 三浦 清春
厚生労働省は7月23日、高齢者医療制度改革会議に、新制度の中間まとめ案を示しました。出席した委員から、中間まとめ案で地方公聴会を開くことに対して、反対意見や懐疑的との発言があったように、議論が未消化なままで、拙速にとりまとめた案と指摘せざるを得ません。地方公聴会での意見交換に混乱を招くことが危惧されます。
中間まとめ案は、年齢で区切られ独立の別制度に切り離される仕組みを廃止し、現役世代と同じ国保か被用者保険に加入することや、市町村に健診の実施を義務付け、保険証の発行を行わせるなど、08年3月末まで運用されていた老人保健制度の枠組みに、部分的とはいえ戻すことが盛り込まれました。また、高齢者の保険料増加の抑制や、市町村国保の負担軽減策なども示しています。このように部分的とはいえ要求が反映したことは、国民の世論と運動の成果といえます。私たちは、速やかに現行制度を廃止して、いったん老人保健制度に戻し、国民の受療権を保障する医療制度の構築に向けて、国民的な議論を尽くすよう改めて要求します。
中間まとめ案の最大の問題は、出席委員から「国保の中での年齢区分ではないか」と強く批判されたように、高齢者の医療給付費の財政を別勘定にして、その1割相当分を高齢者の保険料負担にするという、現行制度の根幹を維持することです。しかも、保険料の負担割合は1割から自動的に引き上がります。地域の医療給付費増が、地域の保険料に跳ね返り、引き上げが困難になれば、医療給付の抑制に向かわざるを得なくなるという制度はきっぱりと撤廃すべきです。
こうした給付抑制の仕組みは、介護保険で導入され、その後、現行制度に持ち込まれましたが、新制度では都道府県単位で運営する国保にまで拡大しようとしています。さらに、市町村国保と被用者保険を都道府県単位で再編・統合し、「地域保険としての一元的運用」の中でも位置づけて、すべての国民、医療保険制度に広げる方向です。
全国民共通のナショナルミニマム保障に対する国の責任を後退させ、地方に責任を押しつけ、地域間の医療格差を拡大する医療制度に変質させることは、住民の福祉増進を図る地方自治の在り方から言っても、断じて認めることはできません。
以上