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2010年6月28日

厚生労働大臣
長妻 昭 様
日本産科婦人科学会
理事長 吉村 泰典 様
日本産婦人科医会
会長 寺尾 俊彦 様

全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇
医科社保・審査対策部
部長 八木 秀満


日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会提案の「“出産育児一時金直接支払制度”
終了後の抜本的改革に関する要望書」に賛同します

 

3月31日、日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会が、厚生労働大臣宛てに「『出産育児一時金等の医療機関等への直接支払制度』終了後の抜本改革に関する要望書」を提出されました。
医師も患者もともに喜び合える医療の実現をめざして活動している全国保険医団体連合会は、この要望書の提案について別記(別紙添付)の理由により賛同します。「要望書」が提唱しているように来年3月末までの時限措置となっている出産育児一時金「直接支払制度」をひとまず終了させ、医療機関に一方的に負担を押し付けるのをやめて、2011年4月からは、妊産婦も産科医療機関も双方が安心して妊娠とお産、そして子育てに臨むことができ、喜ばれる制度となるように、出産育児一時金制度の抜本的改善を行うことを強く要望します。
両学会・医会は、下記のような「要望事項」を提案しています。


テキスト ボックス: 〔日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会の「要望事項」〕  1.「出産育児一時金等の医療機関等への直接支払制度は」平成23年3月をもって終了し、これに代わる新たな制度を創設すること。  2.平成23年4月移行の新たな制度の検討は、出産に直接要する費用や出産前後の健診費用等の出産に要すべき費用の経済的負担の軽減を図るために支給する出産育児一時金の本来の趣旨に沿って行い、特に下記の点が配慮されること。  (1)出産育児一時金の請求と支給は、保険者・被保険者間での完結を原則とすること。  (2)出産育児一時金はお産をした人が事前申請を行えば、出産事実の通知の直後に受領できる制度とすること。  (3)振込み指定制度を利用することなどにより、被保険者が希望する場合は、出産育児一時金の全部あるいは一部を分娩施設等への支払いに充てることができるようにすること。  (4)事前申請および出産事実の通知に係る手続きは可能な限り簡略化すること。  (5)無保険者等受給資格のない人への制度上の配慮が成されること。  3.子育て支援のため、平成23年度以降、出産育児一時金支給額をさらに増額すること。


出産育児一時金「直接支払制度」は、本来退院時に自費で支払いを受けていた分娩費用が2カ月間未払い状態に置かれることによって、医療機関はつなぎ資金が必要になり、予備費を取り崩す、その余裕がなければ本来なら全く必要のない融資を受けて利払いと返済をしなければならなくなるという制度です。この取り崩した予備費や受けた融資の相当額は、直接支払制度を終えなければ清算されません。私たちは、妊産婦には便利でも医療機関にとっては大きな負担を強いられる理不尽な制度であることを指摘し、部分修正でもよいので一刻も早い支払いをと改善を要求してきました。
現在のところ、これは実現していません。
私たちは上記のような理由で、産科医療機関が、分娩中止や場合によっては廃院に追い込まれる可能性を指摘してきました。これはすでに起こっています。分かっているだけでも2009年9月〜2010年3月28日までに全国で閉院又は分娩を中止した医療機関は、41診療所と11病院。合計52施設です。そのうち閉院は22カ所、分娩中止は30施設です。これらの医療機関では月680件、年間8,160件の分娩が取り扱われていました。この事は、妊産婦にとってお産をする施設が減り、ますます少子化に拍車をかけることに直結します。 
〔賛同する理由〕
私たちは、出産育児一時金の給付の今後のあり方について、下記のような理由により日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会の「要望事項」の内容に賛同します。

○「出産育児一時金の請求と支給は、保険者・被保険者間での完結を原則とすること」について
出産育児一時金は、分娩費用に充てるためだけでなく出産と育児に要する費用として、加入保険の保険者と被保険者との間で請求と給付が行われるべき。
分娩費用に充てるかどうか、どのように受け取るかは、保険者と被保険者との間で決めるべきこと。

○事前申請による「出産事実の通知の直後に受領できる制度とすること」について
出産育児一時金は妊娠12週以上になれば受給資格が発生する。従って、妊娠12週以降出産予定日と分娩施設が明確になった時点で事前申請を行い、出産直後の通知により退院時までに被保険者に給付することで、産婦が現金を用意しなくても支払い可能な制度に改善できると考える。
また、その支払い方法の一つとして医療機関への「受領委任払い」も考えられる。

○「無保険者等受給資格のない人への制度上の配慮」について
出産育児一時金は医療保険加入者であることが前提だが、妊産婦の一番の困難は保険料が払えず無保険状態になることである。経済的困難な場合などのために助産施設入所制度もあるが、そういう人でも安心して出産ができるよう格別な配慮を行うべきと考える。

○平成23年4月以降の出産育児一時金のあり方について
現物給付には次のような理由で反対する。@妊娠・出産は「疾病又は負傷」でなく、現物給付(療養の給付)にあたらない。A診療報酬に組み込まれると「出産育児一時金」でなくなり、退院時3割の自己負担が生じ、大幅な患者負担増となる。B医療行為の行えない助産所では分娩を扱えなくなる。C現状の出産育児一時金額39万円と同額となる保険点数化は保障されないのは明白。その差は選定療養の対象とされるなどにより、産科医療機関は差額徴収に頼らざるを得なくなり、混合診療の拡大につながる問題点を抱えることになる。                              以 上