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膨張する薬剤費
−概算医療費の伸びに関する分析−

2010年9月22日
全国保険医団体連合会


  8月16日、厚生労働省は2009年度の概算医療費が35兆3千億円に上り、7年連続で過去最高を更新したと発表した(図1)。
2009年度の概算医療費は前年と比較して1.2兆円増(入院4,300億円増、入院外7,900億円増)であるが、入院外の増加分7,600億円の大半は薬剤費7,500億円で占められる(図2)。
2001年度と比較すると、8年間で入院1.7兆円、入院外3.2兆円、合計4.9兆円増加している。
概算医療費は毎年1兆円ずつ増えている訳ではない。対前年増減額でみると、1兆円増えているのは、2001年度、2005年度、2007年度、2009年度といずれも、改定年度の翌年である。これは薬剤費の伸びと連動している(図2)。
入院外医療費のうち、医科診療所は0.6兆円増と緩やかな伸びを示し、歯科はほぼ横ばいである。これに対して調剤薬局の伸びは2.6兆円増(+80.5%)と突出し、2009年度には5.9兆円に達している(図3)。この大半は薬剤費の増加によるもので、2009年度の調剤薬局医療費の74.0%が薬剤費で占められる(図4)。
レセプト1件当りの入院外医療費は歯科、医科診療所ともに年々減少し、2001年度を基準とすると、2009年度で医科診療所はマイナス10.8%、歯科はマイナス14.8%に達する(図5)。
薬価は改定のたびにマイナス改定である。しかし、薬価改定率の計算式には新薬の薬価は含まれていない。このため改定年度には一時的に下がるものの、新薬の売り上げと高齢化に伴う薬剤使用量の増加と相まって、改定翌年には上昇し、2009年度には+27.5%と急増している(図5)。
薬剤費とともに年々増加しているのが人工透析の費用である。入院外医療費の伸びを薬剤費、人工腎臓(透析)、調剤薬局の技術料と医科本体その他、に分けると、伸びの大半は薬剤費2.0兆円によって占められ、人工腎臓、調剤薬局技術料の伸びを除くと、医科本体の医療費は僅か0.02兆円の増加に過ぎない(図6)。
2001年度から2009年度までの8年間に入院外医療費は医科、歯科ともに実質的に、ほとんど増加しておらず、医療費自然増の本体は膨張する薬剤費にあると言える。

以上