厚生労働大臣 細川 律夫 殿
2010年10月3日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇
原則、標準病名での保険請求を規定した通知の撤廃を求める要請書
本年9月、社会保険診療報酬支払基金より「レセプト電算処理システムに係る傷病名コードの記録について(お願い)」との文書が医療機関宛に送付された。
レセプトの傷病名については、「診療報酬請求書等の記載要領等について(平成22年3月22日付け保医発0326第3号)」において、原則として、標準病名で行うように規定されている。
標準病名は平成14年の通知により原則化されたものの、医療現場の実態にそぐわず、今なお保険請求に使用される傷病名の2割以上が標準病名以外の、いわゆるワープロ病名であるといわれている。これは、わが国において病名の標準化がいかに困難であるかを如実に示す結果といえる。
「レセプト電算処理システムに係る傷病名コードの記録について(お願い)」文書では、類似した傷病名については「傷病名コードの推進について」(平成22年3月26日医療課事務連絡)を参照するようにとされているが、1万5千組以上の対応表を参照しながら外来診療を行うことは、現実的とは言えない。
この文書には具体例も付記されている。一例を挙げると、「抑うつ状態」は「うつ病」に改めて保険請求を行うように「お願い」されている。しかし、「抑うつ状態」と「うつ病」は医学的に似て非なるものであり、このような例は数えきれずある。
傷病名を標準化すれば、確かに審査は効率化するが、医療現場でのメリットはないに等しく、いたずらに医師の事務作業量を増やすものと言わざるを得ない。
全国保険医団体連合会が会員を対象に実施したアンケート調査では、75%が「医学的に必要で投薬、処方を行ったのに、過剰として減点・査定されたことがある」と回答し、71%が「医学的に必要であるが、減点・査定されるために、投薬、処方、あるいは、その量を制限せざるを得なかった経験がある」と回答している。
審査の効率化のみを追及し、コンピュータによる画一的審査が一般化すれば、最終的な不利益は国民が被ることとなる。
「医療」を「審査」にあわせるのではなく、「審査」を「医療」にあわせるべきである。
以上のことから下記を要求する。
記
一、医師が、標準病名か否かという無用の判断に煩わされることなく医療に専念できるように、原則として標準病名での保険請求をするよう定めた通知を撤廃すること。