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2010年10月6日


帝京大学医学部附属病院に対する警察の捜査について

全国保険医団体連合会
政策部長 三浦 清春


 帝京大学医学部附属病院は9月3日、多剤耐性アシネトバクター(MRAB)に多くの入院患者が感染し、死亡者の中には院内感染が原因の可能性もあると発表した。その後、全国でMRABの院内感染事例が相次いだ。
 この問題で、厚労省は9月7日、帝京大学病院に医療法に基づく立ち入り調査を実施したが、同時に、警視庁が業務上過失致死の疑いで医師ら同病院の関係者に事情聴取を行ったとされている。
すでに日本医師会をはじめ広範な医療関係団体が、専門家らによる調査結果が出される前の段階での警察の捜査に対し抗議声明を発表しているが、真の原因究明と再発防止策を明らかにするためにも、刑事訴追の可能性を含む警察の事情聴取は厳に慎むべきである。

 今回の対応の基本は、原因究明と再発防止である。厚労省や東京都の立ち入り検査や国立感染症研究所の疫学調査など、専門家による事実関係の調査と原因究明こそ優先すべき課題である。
 厚労省は、多剤耐性菌による感染症の発生動向の把握に乗り出すとともに、今回の院内感染の原因となったアシネトバクターを感染症法の届出対象に指定する省令改正等を検討している。こうした緊急の対応とともに、今回の事態の背景として指摘されている、大学病院における医師の過酷な勤務状況や全国的な医師不足の問題、院内感染対策としての診療報酬上の不十分さを解決することも忘れてはならない。

 本会は政府に対して、医療費抑制政策を抜本的に転換するとともに、医療事故における原因究明と再発防止、被害者救済を目的に、中立的な専門家等で構成される第三者機関の設立や、全科を対象とした無過失補償制度の創設、深刻な医師不足の解消を、強く求めるものである。

以上