2010年11月14日
厚生労働大臣細川 律夫殿
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇
被爆者援護法を改正し、原爆症認定制度を抜本的に見直す要請書
貴台のご尽力に敬意を表します。
さて、平成20年3月20日に原爆症認定の「新しい審査の方針」が定められ、平成21年6月22日に甲状腺機能低下症、慢性肝炎・肝硬変が積極認定疾患に加えられましたが、「放射線起因性が認められないため」として多数の認定申請が機械的に却下されています。平成20年度は申請件数2,981件中、却下は62件(2.1%)に過ぎませんでしたが、平成21年度は4,941件中2,134件(43.2%)が却下、平成22年4月〜6月審査分では、1,611件中、実に1,363件(84.6%)が却下されています。
これは、「被爆者援護法の精神に則り、より被爆者救済の立場に立ち、原因確率を改め、被爆の実態に一層即したものとするため」とした同指針の趣旨に反するものであり、申請後、長期間待機を強いられたあげく、却下通知を受け取った被爆者の落胆は想像を絶するものがあります。
厚生労働省は今なお残留放射線、内部被爆の影響を否定し、「原子爆弾の放射線に起因する疾患を発症するほどの放射線被爆がなかった」と判断していますが、残留放射線、内部被爆によって脱毛、下痢、歯肉出血等の急性期症状が発生した事は動かし難い事実であり、一連の原爆症認定集団訴訟においても、それを認める判決が下されています。
原爆症認定を申請した全ての被爆者に共通するのは、「自分が苦しんでいる病気が原爆によってもたらされた事を認めて欲しい」という切なる願いです。厚生労働省は科学的事実と司法判断を謙虚に受け止め、被爆の実態に即した認定を行い、被爆者に謝罪すべきです。
米国のオバマ大統領のプラハ演説を契機として、核兵器廃絶の機運がこれまでにない高まりをみせる中、唯一の被爆国である日本が、核兵器廃絶に関して世界の先頭に立つことは世界的責務です。そうした中で、被爆者の申請却下を繰り返すわが国の現在の原爆症認定制度は時勢に逆行するものと言わざるを得ません。
原爆投下から65年が経過しましたが、被爆が人体への長期に渡る影響について全てが科学的に解明されたわけではありません。しかし、被爆者の高齢化は進み、ことに悪性疾患を有する被爆者においては一刻の猶予も許されません。
原爆の惨禍を二度と繰り返さない決意を世界に示すためにも、被爆者援護法を原爆の被害を国として償う趣旨を明確にする法律へと改正し、現行の原爆症認定制度を抜本的に見直すことにより、原爆の影響を否定しえない疾患、健康被害を有する全ての被爆者を速やかに原爆症と認定することを要請するものです。
以上