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指導、監査を巡る収賄事件について

2010年12月15日
全国保険医団体連合会
会長 住江憲勇

 

コンタクトレンズ(CL)診療所への指導・監査を巡り、現職の厚生労働省課長補佐(年金局国際年金課)が収賄罪で起訴されていた事件の初公判が12月7日に行われた。同課長補佐が起訴事実を認めたため、厚労省は12月10日付で同課長補佐を懲戒免職処分にした。この元課長補佐は、保険局医療課指導監査室の特別医療指導監査官在任中に、CL販売チェーン社長ら(贈賄罪で起訴)に対し、同チェーンが実質的に運営する眼科診療所への指導・監査を免れる方法を教える見返りとして、計1175万円の現金を受け取っていた。また、厚労省の発表によると、元課長補佐は、同診療所が指導対象となった際に監査対象としないよう社会保険事務局(当時)に働きかけていたとされている。

起訴された元課長補佐が便宜を図ったCL診療所が、実際に監査対象から外されていたとすれば、監査の対象医療機関を恣意的に選定することが可能であったことになり、指導・監査制度の根幹をゆるがすものである。個別指導においては、高点数の医療機関又は情報提供があった医療機関が選定の対象となるとされているが、社会保険事務局(現在の地方厚生〔支〕局)は、個別指導にあたって、これらの選定理由のうち、何れによって選定されたのかを医療機関側に説明する必要はないとしている。このことは、われわれ医療機関側に、個別指導の選定が恣意的に行われているのではないかとの疑念をいだかせてきた。また、個別指導から監査に至る手続においても、どの程度の「不正」や「不当」が処分の対象とされるのか基準が不明確であることも、保険医療機関登録・指定の取消処分等の手続が適正ではないとの指摘につながっている。厚労省は、個別指導等の選定基準を明確にするなど、指導監査業務の透明性の確保を早急に図るべきである。

 今回の事件を受けて、厚労省は政務三役と有識者からなる検討チームを立ち上げ、再発防止策を取りまとめるとともに、指導監査業務についても見直しを行うとしている。この検証チームで策定される再発防止策や業務の見直しが、指導件数や返還金額の目標を定めるなど、いたずらに指導監査業務の強化に結びつくようなことがあってはならない。また、指導監査業務の強化については、警察官を活用するべきであるとするなど、指導・監査を犯罪捜査と同一視する意見が一部にある。当然のことながら、これらの意見は指導大綱・監査要綱からも逸脱するものである。そして、指導の際に担当職員が取消処分等の権限を背景に威圧的な言動を行うことが許されている現状こそ、即刻改められるべきである。

保団連は、厚労省が今回の事件の全容を究明することを求めるとともに、指導・監査制度の抜本的かつ民主的な改善を求めるものである。


以上