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イレッサ訴訟 大阪地裁判決について

                         2011年2月28日
全国保険医団体連合会
研究部長 斉藤 みち子


  肺がん治療薬「イレッサ」の副作用で死亡した患者の遺族らが、国と輸入販売元のアストラゼネカ社に損害賠償を求めていた訴訟で、大阪地裁は2月25日、アストラゼネカ社に製造物責任法上の欠陥があったとして、6,050万円の賠償を命じる判決を言い渡した。しかし、国の責任については、対応の不十分さを指摘したものの、著しく合理性を欠くとは認められないとして棄却した。

判決が、抗がん剤の副作用情報の開示について、製薬企業の製造物責任法上の責任を認めたことは画期的である。原告は、イレッサの危険性について十分かつ具体的に情報提供されなければならないのに、添付文書の副作用欄の4番目に記載されていたことなどから、情報提供の不十分さを指摘していた。判決は、原告の主張を認め、添付文書の重大な副作用欄の最初に記載すべきだったと指摘、製造物責任法の指示・警告上の欠陥があったとして損害賠償を命じた。

同時に、賠償責任を否定した国に対しても、添付文書の記載に関する行政指導について、「必ずしも万全な規制権限の行使であったとはいい難い」として、対応の不十分さを指摘していることは重大である。1月7日に出された東京地裁と大阪地裁の和解勧告では、イレッサ承認時の添付文書について製薬会社とともに国の救済責任も認め、和解金の支払いと誠実な協議を求めていた。

この問題に関連して、日本医学会などが出した和解勧告批判の声明文を厚労省自身が作成していたと報道され、2月24日の予算委員会では、細川律夫厚労相が事実関係の調査を答弁している。事実とすれば、厚労省が自ら和解勧告批判の世論誘導を図ったものであり、到底許されることではない。政府は、医の倫理に則った薬剤行政を推し進めるべきである。

「副作用が少なく夢の新薬」として売り出されたイレッサにより、既に800人以上が間質性肺炎で死亡しており、薬害イレッサ問題を早期に解決することは、国とアストラゼネカ社の責務である。国とアストラゼネカ社は、今回の判決を真摯に受けとめ、薬害根絶のための検証と対策に取り組むことを要望する。

以上