国民皆保険を壊すTPP参加は容認できない
(『全国保険医新聞』2011年3月5日号より)
昨年末、菅首相が突如表明し、6月に最終決定するとされるTPP(環太平洋連携協定)参加問題。医療の分野では、医療の市場化拡大による国民皆保険の崩壊が危惧されている。全国保険医団体連合会や各地の保険医協会をはじめ、日本医師会、全日本民主医療機関連合会などがこぞって参加反対や懸念を表明している。
医療を「もうけ本位」にするのか
保団連の三浦清春政策部長は、マスコミからの取材に答え、「TPP参加で、日本の国民皆保険制度が『非関税障壁』とされかねない」と指摘した。
TPP参加には、関税のほか、関税以外の輸入制限措置(非関税障壁)の撤廃・緩和が条件となる。国民皆保険制度が「非関税障壁」とされれば、医療分野に市場原理が持ち込まれることになる。
三浦政策部長は「医療費を支払えない人は満足な医療を受けられなくなる」、「TPP参加問題では、医療を社会保障として守るのか、もうけ本位にするのかが問われる」と指摘した。
医療の民営化を日米で共同実行
「TPPを主導するアメリカが考えているのは、農業や郵政と並んで医療の民営化。これを日米の共同で実行するのがTPP」。2月18日の衆議院予算委員会のQ考人質疑で、萩原伸次郎横浜国立大学大学院教授は、TPP参加のねらいを指摘した。
政府の行政刷新会議が1月26日にまとめた「規制改革」中間とりまとめでは、「改革の方向性」として、「公的保険の適用範囲を再定義」するとしている。
TPP参加によって、医療ツーリズムによる利益追求のための患者選別や、外国資本が経営に参画した医療法人・医療機関が広がり、混合診療の拡大や、解禁される事態が懸念される。
各地で反対の声
2月24日には、TPP参加に反対する民主党などの国会議員らが中心となって「TPPを考える国民会議」の設立を発表し、代表世話人に宇沢弘文東京大学名誉教授を迎えた。
岩手、福島、大阪歯科、奈良などの各保険医協会が、TPP参加問題で理事会決議や見解、理事長声明を出している。いずれも、医療の市場化・営利化拡大により国民皆保険制度の崩壊を招くと指摘している。保団連は1月31日、三浦政策部長の談話を発表した(要旨は本紙2月15日号)。
また日本医師会は昨年12月、TPP参加に懸念を表明する見解を発表、全日本民医連も参加反対を明らかにしている。
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