原発依存のエネルギー政策の根本的な転換を
2011年5月17日
全国保険医団体連合会
会長 住江憲勇
東日本大震災による東京電力福島第一原発の事故は、2カ月を過ぎた現在も、冷却機能の回復に至らず、放射性物質の外部への流出など、依然として予断を許さない状況が続いている。放射性物質の流出は、広範囲にわたる外部被曝の危険はもとより、農産物や水道水の汚染による内部被曝の危険など、甚大な被害をもたらす可能性が指摘されている。現在、まず第一義的に重要なことは、福島第一原発の事態を収束させることであり、そのための英知を結集した迅速な対処と、放射性物質の拡散、健康被害の影響についての正確な情報開示が求められている。
福島第一原発の事故は、「想定外」の不可抗力による事故ではなく、原発の「安全神話」にしがみつき必要な対策を怠ってきた歴代政府、電力会社による人災である。
報道によれば、福島第一原発1号機では、電源喪失後の早い段階で極めて高い放射線量を検出、津波の影響を受ける前に地震の揺れで大きな損傷が生じていたことが指摘されている。電源喪失と炉心溶融の可能性は国会でも取り上げられたが、政府は「ありえない」との趣旨の答弁に終始した。政府や東京電力は、今回の事故が人災であることをふまえて被災地の復興や賠償に取り組むべきである。
同時に、核燃料サイクル政策の中止を含め、原発に依存する日本のエネルギー政策を根本的に転換し、自然エネルギー中心の政策に改めるべきである。発生確率の高い東海地震の想定震源域の真上に位置する中部電力浜岡原発の運転が一時停止されたが、政府は浜岡以外の運転停止を否定している。今回の事故は、世界有数の地震国である日本に原発を集中立地することの危険性を改めて示している。
本会は、地震による生活被災に原発被災が重なる「原発震災」の発生が現実に起こりうることを指摘し、原発の耐震安全体制の確立を求めてきた。この立場から、放射性物資の流出から住民の命と健康、財産を守るとともに、これまでの原子力行政、エネルギー政策を見直すなど、下記事項の実現を強く求める。
記
1.福島第一原発事故及び放射性物質の拡散に関わる正確な情報を速やかに公表するとともに、事態の拡大を防止するため総力を傾注すること。
2.住民・原発作業者の被曝拡大を防止し、被曝者には適切に対応すること。
3.原発事故による賠償は、東電の責任を明確にし、全面的な補償を行うこと。
4.全国の原発を総点検し、安全性に問題のあるものは直ちに稼動を中止すること。
5.福島第一原発7・8号機をはじめ、原発及び関連核施設の新増設を中止すること。
6.危険なプルトニウム利用の核燃料サイクル政策を中止すること。
7.原発依存のエネルギー政策から自然エネルギー政策に転換すること。
8.安全最優先の権限と責任を持つ原子力の審査・規制機関を設立すること。
以上