法案の中身を国民に周知せず、たった18時間の審議で採決した
「介護保険法等の一部を改正する法律案」の成立に抗議する
2011年6月15日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇
「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案」が6月15日の参議院本会議で可決・成立しました(民主、国民新党、自民、公明、みんなの党等の賛成:共産、社民は反対)。法案は、下記に掲げるように重大な問題を有しており、これらが実施されれば、介護サービスの基盤を弱体化させてしまいます。
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新設される「介護予防・日常生活支援総合事業」や「複合サービス」は、社会保障に対する国の責任を放棄し、自治体による介護保険給付格差を拡大する。
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医療・介護現場が強く求めている介護療養病床廃止撤回は6年間の廃止延期に留める一方で、医療保険の病床削減や介護療養病床廃止を企図して介護職員等による喀痰吸引・経管栄養を解禁する。
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公費負担を増やさないことを前提にした財政の枠組みとなっている。
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医療と介護の連携を名目に医療保険・介護保険給付を制限する。
ところが政府は法案の中身を国民に周知することなく、衆議院と参議院合わせてたった18時間の審議で法案を採決・成立させました。当会をはじめ多くの団体から法案の問題点や慎重な審議を求める声が寄せられていたにもかかわらず、短時間での審議・採決を行なったことは国民無視の国会運営であり、断固抗議します。
「介護崩壊」は現在進行形です。 これを食い止めるためには、利用料・保険料負担の拡大や給付の削減ではなく、政府が公約どおりに公費負担を拡大し、介護サービスの充実を行うことが必要です。そのために新たに必要となる財源は、消費税の増税ではなく、国と自治体の責任と負担で確保することを強く求めるものです。また、介護職員処遇改善に関わる費用は国庫負担で実施し、対象となる範囲や支給金額を引き上げるべきです。同時に、介護サービスの向上を図るため、次回改定で介護報酬を引き上げるよう求めます。
なお、改定される介護保険の内容は今回の国会成立ですべてが決まるのではありません。低所得者に対する施設の食事・居住費負担軽減措置の改悪や、多床室(大部屋)における居住費の保険給付外しなどが政省令で実施される危険性があります。また、来年4月の診療報酬・介護報酬改定では、医療と介護の連携という言葉の陰で、実際には、リハビリに見られるように医療保険から介護保険に給付を移し、区分支給限度額を超える部分についてスポーツジム等に保険外で実施させる動きが有ります。
地方自治体でも日常生活支援総合事業や複合サービスの取扱い、介護保険料の検討が始まります。こうしたことから当会は、政省令の内容や介護報酬改定内容を含め、介護保険法の問題点を改めて国会で検討するとともに、地方議会においても利用者の立場にたった介護サービスの確立に向けて、住民への周知と十分な審議を行うことを求めます。