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「社会保障・税の一体改革」の撤回と地域医療をささえる
医療・介護体制の確立を

 

 甚大な被害をもたらした東日本大震災は、歴代政府が進めてきた構造改革路線によって疲弊した地域や暮らし、崩壊した医療の姿をあらためて浮き彫りにした。これまでの路線の継続では、被災者の立場に立った地域の復興、医療の復興は出来ない。
政府は、今こそ、国民の生命と生活を守るために最大限の施策を講じなければならない。にもかかわらず、国会ではまともな震災対策を取らず、民主・自民の二大政党が競い合って、社会保障費削減と消費税増税、社会保障・税の共通番号制導入、「地域主権改革」、「総合特区」、TPP参加、衆参比例定数削減などを推進する動きを強めている。その一つである「社会保障・税一体改革」では、外来受診時定額負担の導入や70〜74 歳の窓口負担の2割負担、外来診療「適正化」による外来患者数の5%削減をはかるなど、第一線医療を直撃するものとなっている。税と社会保障をはじめ、あらゆる国民生活に一層の負担増を強いるこれらの政策は断じて容認できない。
今、政府が最優先に行うべきことは、まず国庫負担を拡大するとともに、大企業が応分の負担をすることを前提とした震災復興のための財源を確保し、被災者の生活再建と補償、医療の確保、住民合意の復興施策の実行、未曾有の原発事故の収束と除染、被曝者・被災者への補償とあわせ、公的介護保険制度や公的医療保険制度を改善することである。
さらに、医療・介護サービス提供体制に係わる基盤整備「改革案」を年内に取りまとめ、来年4月に予定されている医療・介護報酬の同時改定に反映させるとともに、来年の通常国会に基盤整備一括法案を提出するなど、地域医療にかかわる重大問題に直面している。この「改革案」には、平均在院日数の大幅短縮による病床削減、第一線医療を担う医師の役割の縮小と医行為への看護師・介護職の参加、「地域間・診療科間の偏在の是正」による自由開業医制の否定、高齢者の医療・介護サービス提供体制の制限など重大な問題が内包されている。「施設・病院から在宅へ」「医行為は医師から看護師へ、看護師から介護職員へ」「生活支援はヘルパーから、『新しい公共』の名でボランティア・企業へ」の流れを促進し、高齢者の医療・介護提供体制を抑制しようというものである。
私たちは、政府が生活再建と住民合意を最優先にした震災復興に直ちに取り組むとともに、崩壊した地域医療を立て直すために国と自治体の公的責任を明確にし、次の施策を取るよう、強く求めるものである。

一、地域医療確保のため、全ての医科・歯科被災医療機関の再建に公的支援を行うこと。
一、第一線医療を直撃し、さらなる国民負担増を押し付ける「社会保障・税一体改革」案は撤回すること。
一、窓口負担を大幅軽減し、診療報酬の引き上げにより、医療再生へ抜本的に転換すること。
一、国保の広域化を止め、国庫負担を増額し、国保料の引き下げ、保険証の全国民への交付を行うこと。
一、後期高齢者医療制度を廃止し、高齢者が安心して医療を受けられる制度とすること。
一、軽度者の介護保険給付制限を止め、利用者負担を軽減し、介護報酬を引き上げること。
一、震災復興に逆行し、医療の市場化拡大を狙うTPP参加は止めること。

2011年10月23日
全国保険医団体連合会
地域医療活動交流集会