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イレッサ訴訟 大阪高裁判決について

                         2012年5月28日
全国保険医団体連合会
研究部長 斉藤 みち子

肺がん治療薬「イレッサ」の副作用で死亡した患者の遺族らが、国と輸入販売元のアストラゼネカ社に損害賠償を求めていた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は5月25日、一審大阪地裁判決を破棄し原告側の請求を棄却した。

最大の争点であった副作用情報の開示について、昨年2月の大阪地裁判決は、添付文書の4番目に記載されていた副作用情報を最初に記載すべきと指摘し、アストラゼネカ社の製造物責任法上の「欠陥」を認定、損害賠償を命じた。

今回の大阪高裁判決は、アストラゼネカ社が重大な副作用を予測することは困難で、添付文書の記載についても、肺がん治療などを専門とする医師が読めば副作用の危険性を認識できたと指摘、アストラゼネカ社の責任を否定した。国の責任についても、輸入・販売の承認に違法性はないとした。

判決は、昨年11月の東京高裁判決と同様に、国と企業が負うべき責任を医療現場に転嫁し、薬害裁判を通じて確立されてきた、国と企業が予防原則に基づいて安全対策を確保することの必要性を否定するもので、強く抗議する。

同時に、既に850人近くが間質性肺炎で死亡している薬害イレッサ問題の早期全面解決が求められている。政府は、薬害被害者救済、がん医療体制の整備、抗がん剤による副作用を対象とする救済制度の創設など、薬害根絶に向けた対策に全力で取り組むべきである。