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内閣総理大臣 
安倍晋三 殿                                  2013年10月10日
                                  全国保険医団体連合会理事会

復興特別法人税の前倒し廃止の検討に抗議する

 

政府は、消費税8%への引上げに伴う「景気腰折れ」対策を口実として、年間9000億円に及ぶ復興特別法人税の1年前倒しでの廃止を検討し、更なる法人実効税率の引き下げも模索している。しかし、企業減税は腰折れ対策にはなりえない。腰折れそのものの原因は、国民の購買力の低下によるものであり、まず消費税増税の中止こそが求められている。

そもそも、復興特別法人税は、増税ともいえない。法人税率等5%の引き下げに対して法人税額1割分を上乗せするだけであり、単に減税幅を圧縮するにすぎない。国民には、文字通り、所得税増税を25年、住民税増税を10年と長期に課す一方、わずか3年の復興特別法人税を前倒しで廃止し、更に減税幅を広げ、大企業に減税の恩恵を及ぼすなど、到底、国民の納得は得られるものではない。
復興特別法人税は、大震災からの復興に向け、オールジャパンで取り組む一環として企業に課された以上、内部留保など十分な経営体力もある大企業は、その社会的地位にふさわしく、この国難を支えることが求められている。政府は、被災地・国民に向けて消費税増税を語る前に、国民生活・国土の再興から、むしろ企業に一層の太い絆(税負担)を求める気概こそ発揮すべきである。

依然、仮設住宅に10万人以上の被災者が暮らし、二重ローンの買取決定数等は相談件数の1割弱である。県外避難者の間には、避難生活のストレスや体調変化による医療機関受診が5割強にのぼり、内1割強が精神科・心療内科に行ったとも報道されている(毎日新聞調査)。震災に伴う様々な疲弊・疲労が重なる中、国は被災者への医療・介護費用の全額支援を打ち切り、復興途上の自治体にその負担を転嫁している。

被災直後より、医療費等の免除は、復興が遅々として進まない中、被災者に生きる希望を与え、明日への安心を支えてきた。これこそ、憲法で謳う生存権の保障そのものである。保険料・窓口負担等の無料化に必要な財源(予算)は約1,100〜1,200億円であり、年間約4兆円に及ぶ復興予算からすれば全額補助の継続・復活は十分に可能である。医療費等の免除は打ち切り、被災者のいのちをないがしろにする一方、大企業にはわずかな復興財源の免除さえ模索する国の姿勢に対して、強い憤りを覚える。

患者・国民のいのちと健康を守る医療者として、我が国の郷土・風土を愛する一国民として、本理事会は、政府に対して、復興特別法人税の前倒し廃止の検討を撤回し、即時に全ての被災者に医療費等の免除を国が責任をもって保障するよう強く求めるものである。